「ドイツ人は残業しない」説の大いなる誤解 みんなが休暇1カ月取っても回る本当の意味
そしてドイツでは、「今日2時間残業したから明日2時間早く帰る」といった「労働時間貯蓄制度」が浸透しています。
そういう意味で、ドイツの残業は昔ながらの日本の残業と少しちがった性質をもっている、とは言えるでしょう。
権利と不便は表裏一体
欧米の有給休暇消化率を踏まえて、日本もそれに見習おうという意見も目にします。
たしかに長期休暇、バカンスはヨーロッパの多くの国で認められた権利です。ドイツもまた、毎年1カ月の休暇を取る国としても知られています。
でもその数字だけを見て「みんな休暇を取っても仕事が回る。さすがドイツ!」なんていう主張には、ちょっとツッコミを入れたくなってしまいます。
誰かが休暇を取れば、仕事は滞ります。バカンスに最適な夏はとくに、オフィスがガラガラになります。この前なんて、税務署に行ったら租税条約の担当者と確定申告の担当者が両方休暇中で、その後に行った歯医者もまた休暇で閉まっていて、処方箋をもらおうとホームドクターのところへ行ったら、彼女もまた休暇中でした。ちなみに、たまに行くカフェもお休みだったし、駅に入っている安いアジアンレストランも閉まっていました。
「みんな休暇が取れていいじゃないか」というのは、あくまで自分が休暇を取る側の話です。仕事を依頼した側、ユーザー側に立ってみましょう。バカンスのせいで全然仕事が回っておらず、手続きがなにも進まない。担当主義なので、「それは担当者じゃないとわからない。担当者が帰ってくるのは1カ月後」と言われる。これが、「休暇が取れるドイツの姿」なのです。
「みんなが休暇を取っても仕事が回っている」なんて大真面目に言う人がいますが、ちょっと考えてみればいろんな弊害があることを想像できると思います。
もし日本で同じことをしたら、「いいから担当者を出せ」と電話口で怒鳴り散らすお客が現れて慌てて休暇中の人に連絡を取り、休日出勤になるかもしれません。SNSで名指し批判され「やっぱり休むことは悪いことなんだ」という空気になることだって考えられます。
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