女子プロ野球から警察官になった28歳の矜持 野球一筋・熊崎愛さんが選んだ異色キャリア
警察官になってからの悩みを問うと、「ちょっと老けたかな(笑)」と苦笑い。というのも寝不足で肌のコンディションがよくないそうだ。
埼玉県警は当番、非番、休日の3交替制の勤務体系で、当番日の勤務時間は朝9時半から翌朝の9時半までの24時間。
それが終わればその日は非番として帰れるはずだが、当番中に起きた事案の書類作成や実況見分などの後処理を行う必要があるため、そのまま午後まで残業になることがほとんどだという。
寝不足になりがちで肌の調子も悪く、食事も不規則な時間に摂るため、生活リズムが作りにくい。
そんな多忙な日々を送る中で、熊崎さんが日課にしているのは毎日アイロンをかけること。これは警察学校時代からの習慣だ。
そして楽しみといえばやはり野球である。熊崎さんは現在埼玉県警軟式野球部に所属しており、土日に不定期に試合を行っている。
「部員の休みが重なってメンバーが揃えば野球ができるのでそれは楽しみですね。最初は休みとはいえ、体力的に野球をやっても大丈夫か心配だったのですが、意外とできたのでそれからは楽しみにしています」
熊崎さんは貴重な即戦力としての活躍に加え、ボランティアや野球教室などのプレー以外の面での部の活動発信のきっかけとしての役割も期待されている。
今年5月、熊崎さんをキャッチャー役として埼玉アストライアの始球式に登板した埼玉県警軟式野球部監督で浦和西警察署長の木村宏志さんは「試合で出ていない時にはバット引きをやったり、道具をぞうきんで拭いたり、グラウンド整備も最後までやっていました。今までの野球人生で培ってきた素晴らしい人間性がしみついているんでしょうね」と野球を通して育まれてきた熊崎さんの人間性と献身的な姿勢に太鼓判を押した。
野球で培った人間性を生かして
既に引退してから1年半以上が経過しているが、熊崎さんが埼玉アストライアの試合を訪れれば、今も多くのファンが「愛ちゃん!」と声をかけてくる。
「警察官として頑張ることに対して決意を新たにできたのは本当に周りの人の応援のおかげなんです」と熊崎さんは言う。警察官としての一歩を踏み出した時、自分以上に喜んでくれる人がたくさんいた。たとえつらいことがあってもそれが何よりの支えとなっている。
「あとは好きなことを諦めたんだから、そこでできなかったことをもう一方の道で取り返したいという想いは強いです。だから結果が出ないまま引退したことに対しても全く負い目は感じていません。
今は元女子プロ野球選手という肩書を背負っている以上、それに泥を塗るようなことはしたくないですし、むしろ警察で一生懸命頑張ってプラスになることをして、結果野球をやる人や警察に興味を持ってくれる人を増やしていきたいです」
“努力の花を咲かせましょう”
これは熊崎さんの現役時代のキャッチフレーズだ。文字通り、その努力で試験を突破し、次のステージのスタートラインに立った熊崎さん。
警察官のユニフォームを身にまとい、正義という名のキャッチャーミットでホーム・埼玉をこれからがっちり守り抜いていくことだろう。
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