女子プロ野球から警察官になった28歳の矜持 野球一筋・熊崎愛さんが選んだ異色キャリア

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熊崎さんはチームからもファンからも愛される選手だった(筆者撮影)

現役時代には埼玉県警の振り込め詐欺防止キャンペーンのイベントに選手側の先頭に立って取り組んできた熊崎さん。その際には啓発活動のために寸劇で慣れない芝居も披露した。

そしてこの時に接点を持った埼玉県警の担当者に引退後の進路について相談した際、採用試験の受験を勧められたことが警察官転身のきっかけになっている。

熊崎さんは埼玉県に隣接する東京都東村山市出身で、大学は埼玉県川越市にある尚美学園大学を卒業。慣れ親しんだ埼玉の地に貢献していきたいという想いと、野球と同様に仲間を大切にする精神に惹かれ、警察官の仕事を志した。

加えて自分自身が“元女子プロ野球選手”の“警察官”という変わった経歴を歩み、注目されることがそれぞれに新たなアプローチで興味関心を持ってもらうきっかけになるとも考えた。

例えば熊崎さんの呼びかけで女子プロ野球ファンが警察の活動に関心を持ち、犯罪防止や交通安全などに努めるようになる。あるいは警察官としての活躍を知った現役アスリートが次のキャリアの選択肢に警察を入れるかもしれない。

球団からはスタッフ採用の打診もあったが、それでもあえて野球に関わる仕事から離れたのは、元選手の自分だからできる新しい価値を生み出すためだったのだ。

慣れない座学と厳しい警察学校生活

「このユニフォームを着ていたこと、皆さんに応援してもらっていたことに恥じないような次の人生を歩まないといけないという身の引き締めにもなりました。しっかり前を向いて、これだけの応援してくださった人に、そしてそれを教えてくれた野球に失礼のないように生きたいです」

これは熊崎さん現役最後の場となった2016年末のイベント時の言葉である。

12年間の野球人生で培ってきたものや人との出会いに恥じない選択として決めた警察官への道。

それからは睡魔と戦いながら試験勉強に励んだ。朝は体力テストに備えてランニングを行い、その後は自宅から1時間の予備校の自習室にこもって、夕方から授業を受けるという日々。

これまで進学は高校も大学も推薦入試で突破。いずれも面接で筆記試験はない。人生で一番座学に時間を費やすという経験を26歳にして味わうことになった。勉強がつらい時にはアストライアのチームメイトが写った写真を見て、私も頑張ろうと自分を奮い立たせ、試験を乗り越えた。

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