女子プロ野球から警察官になった28歳の矜持

野球一筋・熊崎愛さんが選んだ異色キャリア

元女子プロ野球選手で今年4月から警察官として勤務する熊崎愛さん(いずれも筆者撮影)

3つのトップチームと1つの育成球団から構成される日本女子プロ野球リーグ。

今年、8月下旬に行われる女子野球ワールドカップ(W杯)で日本は前人未到の6連覇を狙うが、そのメンバーにも女子プロ野球選手が6人選出されている。

一方で、女子プロ野球でもオフシーズンになればプロ野球同様、毎年数人が引退を決断してそれぞれ次のキャリアを歩み出している。

埼玉県を本拠地とする埼玉アストライアで活躍し、2016年シーズン限りで惜しまれつつ現役を引退した熊崎愛さんもその1人だ。

熊崎さんは引退後、埼玉県警察の採用試験を受験。見事合格し、警察学校を経て、今年4月から大宮警察署管内の交番に配属になった。

野球一筋だった熊崎さんはなぜ慣れない座学に挑み、試験を乗り越え、次のステップとして警察官の道を選んだのだろうか。そこには彼女なりの野球に対する恩返しの形と慣れ親しんだ埼玉への愛があった。

チームを献身的に支えた功労者

幼少期に再従姉妹(はとこ)の影響で野球を始めた熊崎さんは駒沢女子高校から尚美学園大学を経て、2013年に女子プロ野球のイースト・アストライア(現・埼玉アストライア)にキャッチャーとして入団。プロ4年間で57試合出場、打率.166、15安打の成績だった。特に選手生活の後半は怪我に悩まされ、野球ができない期間が長く続いた。

女子プロ野球では試合に出場しない選手が運営のサポートや球場外売店での販売を行う。熊崎さんは選手としてのモチベーション維持が難しい中でも腐らず積極的にファンサービスを行い、チーム運営をサポートし続けてきた。彼女は筆者が女子プロ野球の取材に入るようになっていち早く顔を覚え、挨拶してくれるようになった選手でもある。

そういった心遣いと持ち前の明るさで周りの人を惹きつけ、ファンにもチームメイトにも愛された選手であった。

昨年9月には選手時代のチームへの貢献を讃え、埼玉アストライアのホームゲームの始球式にピッチャー役として招かれている。

始球式で投げた熊崎さん(筆者撮影)

熊崎さんはキャッチャーというポジション柄、これまで誰かの始球式の球を受ける機会はあったが当然投げたことはない。

ただ、以前から一度始球式で投げてみたいと話しており、球団がその願望を警察官採用試験の合格を祝して実現させたのだ。

それだけグラウンド内外におけるチームへの貢献度が高かったということだろう。

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