女子プロ野球から警察官になった28歳の矜持 野球一筋・熊崎愛さんが選んだ異色キャリア

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野球以外にも熱中できるものを見つけた熊崎さん(筆者撮影)

採用試験を突破すれば、警察学校での半年間の共同生活が待っている。

教官からは副総代(クラスリーダー)に任命され、クラスのまとめる立場として特に厳しく指導された。

昼夜問わず全力で指導してくれる教官とクラスの運営をサポートしてくれる同期生へのありがたみを感じると自分も手は抜けない。

そんな責任感を持って副総代の役割をこなし、周りに相談しながらもクラスをまとめ上げて、無事に警察学校を卒業した。

「半年間の警察学校生活を終えた時に、野球以外にも私にはこんなにも頑張れることがあると気づけて、とても嬉しかったんです。それを気づかせてくれた教官や仲間たちにはとても感謝しています。結局頑張るということに関しては野球も警察も同じなんですよね。

仲間を大切にすることもそうで、本当の優しさは言うべきところはしっかり言ってあげること。私はそこが足りていない部分もあったのでそれも含めて学べました」

街の安全を守ることが野球界への貢献に

厳しい警察学校での生活を経て、4月から配属された交番は大宮署管内でも特に忙しい場所にあるが、親切な応対と物怖じしない仕事への姿勢で周囲からの評価は高い。経験がない事案に対しても失敗を恐れず積極的に取り組み、人一倍多くの経験を積んでいる。

「野球はやった分だけ結果が出るとは限りません。100回バットを振っても試合の打席でヒットが出なければその努力に意味があったのかはわからないからです。

でも今はやり方を覚えてそれをしっかり実行できれば形に残ります。だからどんどんやりたいんです。頑張ったら頑張っただけ結果が出る楽しさを感じています。

この前対応した人に『交番でこんなに丁寧にしてくれたのは初めてだよ』と言われたのは嬉しかったですね」

自分自身が警察官に対して何となく近寄り難いイメージを持っていたからこそ、たとえどんなに疲れていても丁寧な応対を心がけていきたいという熊崎さんが目指すのは強く、優しく、頼りがいのある女性警察官だ。

そして警察官として子どもたちが安心して野球をできる環境づくりに貢献していきたいと話す。

「これまで野球教室などでたくさんの子どもたちと会ってきましたが、この子たちが野球に集中できる環境というのは周りの大人が作っていかなければなりません。

しかし、それ以前に今は子どもが巻き込まれる事件なども起きているので、まずはそういった心配なく、野球をしたり、夢を追いかけられる環境を警察官として整える力になりたいと思います」

警察官として街の安全を守っていくことが、結果として野球をする子どもたちのためにもなり、それが野球界への貢献にもなると熊崎さんは考えている。

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