ガンと闘いフットサル選手を続ける男の矜持 湘南ベルマーレ・久光重貴37歳の向き合い方

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試合直前の練習で、ボールの感触を確かめるように丁寧にパスを出す久光重貴選手(写真:©️SHONAN BELLMARE)

久光は、この5年間、つねに「今、何ができるのか」を自分に問いかけながら、ガンと闘ってきた。

そんな久光が、自らを奮い立たせ、前例のないことに挑戦する背景にあるものは、何と言っても、スポーツ選手であるという強い自負だ。

スポーツ選手、フットサル選手でなければできないことをしたいという強い意思と使命感が、久光を奮い立たせているのだ。

「僕は、フットサルのおかげで病気が見つかって、フットサルのおかげで前を向くことができて、フットサルのおかげで今でも頑張ることができている。

そして、何より、フットサル選手として、自分が頑張る姿を見せることで、同じ病気の人が喜んでくれたり、励まされたという言葉をもらえたりする。それは、フットサル選手である自分にしかできないこと。

また、今後、抗がん剤治療をしながら選手生活を続けたいというスポーツ選手が出て来たときに、久光重貴という前例があるから、やってみようって思ってもらえれば、僕が挑戦したことには、もっと大きな意味が出てくる」

所属クラブと久光の信頼関係

世界的に見ても、抗がん剤治療を続けながら、トップアスリートとして選手生活を送っているという事例を筆者は知らない。命をかけた前例のない挑戦であること自体に凄みを感じるが、久光の治療方法やトレーニングに、大きな秘密があるわけでは、もちろんない。

では、なぜ久光は現役のフットサル選手でいられるのだろうか。

実は、治療を続けながら選手生活を続けるのが簡単なことではない理由は別のところにもある。

日本中、いや世界中を見渡しても、大病を抱えた人間を選手として契約し続けてくれるプロスポーツチームを聞いたことがない。なぜなら、病気の選手を抱えるくらいなら、若くてイキの良い選手を獲得したいと考えるのが普通だからだ。

にもかかわらず、病気の久光に価値を見出し、今でも選手として契約している湘南ベルマーレフットサルクラブの懐の深さも、久光が、闘病を続けながら、現役フットサル選手として活動できている大きな理由の一つだろう。

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