「すべてのサイコパス(精神病質者)は刑務所にいるわけではない。一部の人は役員室にいる」
これはカナダの高名な犯罪心理学者、ロバート・ヘア氏が言った言葉だが、そもそも組織の長に立つ人には、「マキャベリアン」「サイコパス」「ナルシシスト」という、心理学ではDark Triad(暗黒の三元素)と呼ばれる3つの特質を持った人が相対的に多いといわれている。山根氏がその特質を持っているかどうかは断定するわけでも、推論するわけでもない。ここからはあくまでも一般論である。
役員のうち4%がサイコパス
マキャベリアンは、どんな手段や非道徳的な行為も、結果として国家の利益を増進させるのであれば許されるというルネサンス期の政治思想家ニッコロ・マキャヴェッリの著書『君主論』の内容に由来する。個人の野望と利益に固執し、人との関係性より、権力や金を優先する、目的のためなら、他人を踏み台にする、といった特質を意味している。
サイコパスとは反社会的人格のことで、良心が欠如している、他者に冷淡で共感力がない、慢性的に嘘をつく、後悔や罪悪感が皆無、自尊心が過大、自己中心的、責任を取らない、狡猾で人を操る、などの特徴がある。
ナルシシストは、自己愛性パーソナリティ障害ともいわれ、自分の価値を過大評価する、成果や技量を誇張する、自分の優位性を信じ、ひけらかすといった気質を指す。
つまりは共感力が低く、ゲスの極みのようなクズな奴ということになる。ところが、外交的で自信家、人を魅了する力も備えている。新しい試みに積極的、競争心が強く、脅しや恐怖訴求もいとわず、目的のためには手段を選ばないことから、組織の中で、成功を収める人も少なくない。
「マキャベリアンはリーダーシップと関連付けられ、ナルシシストは高収入とリンクがあり、サイコパス的な気質は出世しやすく、金儲けしやすい」といった研究結果が出ている。一般の人たちの中でのサイコパス率は1%程度だが、役員レベルだと4%に上がる、といった調査もある。
日本でも、「リーダーは非情なぐらいが、決断力があっていい」といった考え方もあるようだが、共感力のない独裁的リーダーが、組織や企業に壊滅的なダメージを与えた事例は枚挙にいとまがない。
このようなタイプのリーダーが、有能であるかというと実際は、そういう根拠はなく、企業にとっては、致命的な結果をもたらすことが多い、との見解が大勢を占めている。こうした人たちが、手段を選ばぬやり方で、出世をし、リーダーにまでなれたとしても、その後のマネジメントが優れているというわけではなく、従業員や組織にとっては害悪でしかない、という結論だ。
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