資生堂が「業務用」バッサリ捨てる納得のワケ 化粧品の成長分野へ、真の「選択と集中」

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実は資生堂は今回の業務用化粧品だけでなく、さまざまなブランドや地域で事業撤退を決断してきています。具体的には欧州の中ではギリシャ事業やトルコ事業から徹底していますし、自然化粧品として注目されてきた草花木果(キナリ)のブランドや、エイジング化粧品ブランドのアユーラも売却しています。

今回の業務用化粧品の撤退のように価格競争が厳しい事業から撤退する話よりも、成長分野である自然化粧品やエイジング化粧品、欧州の中でも成長市場であるトルコから撤退するという経営判断のほうが、読者にとって理解しにくいことかもしれません。なにしろ成長している市場から撤退するわけですから。

なぜそのような経営判断になるのでしょう。それは「選択と集中」というものは成長市場かどうかということ以上に、その市場が「自分が勝てる市場なのかどうか」という基準で行われるものだからです。勝てる市場ということのほうが、伸びる市場よりも優先するのです。

「プレステージ化粧品」が伸びてきている

実は過去5年、資生堂が急成長してきた最大の要因は、百貨店などで対面販売されている「プレステージ化粧品」が伸びていることです。「SHISEIDO」や「クレ・ド・ポー ボーテ」という主力ブランドの製品が資生堂の業績を伸ばす原動力になっているのです。その伸びから資生堂の社長も決算説明会で「プレステージファースト戦略だ」と言っているほどです。

このプレステージ化粧品が好調なことで、日本市場が2ケタ成長しています。それだけでなく中国では日本以上の成長率で資生堂ブランドが伸びていますし、その勢いでアジア市場も売り上げ、利益ともに2ケタ成長をしているのです。

中国のSNSでは資生堂ブランドはキーワードの上位になっています。その結果、訪日中国人の爆買いにおいて、資生堂は(転売を防ぐために)数量制限をしなければならないほどの人気です。しかも中国では「日本製の資生堂商品」の需要が根強く、そのため資生堂は日本国内で工場を新設したほどです。

このように「勝てる市場が伸びている」というのは経営としての勝負どころで、ここにどれだけ経営資源を投下できるのかが勝利を左右します。具体的には日本・中国・アジアのプレステージ商品のブランド向上のために惜しまず投資をするということがまずもって重要になります。

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