日銀の金融政策変更は財政にどう影響するか 突発的な金利上昇への備えが重要になる

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市場実勢利回りが0.1%を顕著に超えると、表面利率を0.1%よりも高くすることはありえる。表面利率は発行時点の市場実勢利回りなどを踏まえて設定するのが原則だからだ。表面利率を上げれば、財政における利払費負担は増大する。まさに0.1%を境にした明暗である。市場実勢利回りが0.1%以下になっても財政における利払費負担は減らないが、0.1%超となって、さらに(日銀が今後容認するとみられる)0.2%に近付いて表面利率を上げる情勢となれば、利払費負担が増えることがある。

もちろん、表面利率が0.1%から0.2%に上がっても、直ちに財政難が深刻化するわけではない。しかし、利払費は、新発債からこれまでの2倍になる。10年物国債なら、その影響は満期を迎えるまで、今後10年にわたり続くということだ。利払費は、他の政策経費よりも優先して支出しなければならないものだから、それだけ真綿で首を絞められるがごとく、じわじわと利払費の増加は財政運営の選択肢を狭める形で効いてくる。いわゆる財政の硬直化である。

デフレを克服できた暁には、物価上昇率が上がるわけだから、名目金利は上がって当然である。財政運営はそうした金利上昇にも対応できるように備えをしておかなければならない。財政が金利上昇に対応できなくて、デフレ脱却もままならない。

成長率と同じだけ金利が上がれば財政悪化

財務省が予算審議に合わせて公表する「平成30年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算」では、名目金利が1%上昇すると、利払費が1年後には1.0兆円、2年後には2.2兆円、3年後には3.3兆円と増加する。他方、名目成長率が1%上昇しても、税収は1年後には0.7兆円、2年後には1.4兆円、3年後には2.2兆円しか増加しない。経済成長率が高まっても、同じ率だけ金利が上がれば、利払費の増加のほうが多く、そのままだと財政収支は悪化する。

デフレ脱却も見据えて将来の利払費の増加に備えるには、不要不急の歳出を削減することはもとより、今から国債残高の増加を抑制し、金利が上がっても増える利払費を多くしない努力が不可欠なのである。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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