日本人は地域のダークサイドに無関心すぎる

「悲しみの土地」を観光することで見えるもの

ダークツーリズムは1990年代からイギリスで提唱され始めた概念で、学術論文には1996年に登場し、初の学術書は2000年にJ・レノン教授とM・フォーレー教授によって著された。

ダークツーリズムの歴史と未来

これまで観光資源として認識されていなかった戦争や災害、そしてさまざまな死の現場といった悲劇の場に人々が訪れる現象を彼らは総称してDark tourismと名づけた。従来、War tourismやHolocaust tourismという個別の呼び名はあったが、人類の悲劇を巡る旅を同じカテゴリーに置いて分析を始めた功績は大きい。そして、このDark tourism概念は、セントラル・ランカシャー大学のR・シャープレー教授とP・ストーン教授によってブラッシュアップされていった。

ヨーロッパでは、歴史的記録はポジティブな情報だけでなく、地域にとってはあまり好ましくないネガティブな情報も引き継がれ、一部は展示に供される。つまり、自分にとって都合の良い情報だけを扱うわけではなく、思い出すこともつらく悲しい記憶が当然のように承継されているのである。

いわゆる「負の遺産」は極めて日本語的な概念であり、英訳しにくいと言われている。英語で遺産を表すheritageや、伝説を表すlegendは、決してポジティブな話だけを扱うわけではない。人類の活動の結果残された記憶は、必然的に良い面もあれば悪い面も持つわけで、そうした両タイプの記憶を大切にしようとする考え方がヨーロッパには根づいていた。したがって、ダークツーリズムという新しい言葉が現れた時も、人々は違和感なく受け入れることができたのである。

筆者としては、地域のダークサイドを記録し、その価値を受け継ぐことの重要性を伝えていきたいと考えるが、実は日本こそ、ヨーロッパと並ぶダークツーリズムの発信拠点になるべきであると考えている。

まず、自然災害が多発することが理由の一つに挙げられる。ヨーロッパのダークツーリズムの教科書でも、自然災害の跡が観光対象になるとは書かれているが、実は具体的な記述がほとんどない。これは、ヨーロッパに自然災害があまりないからであり、少ない記述を見ると約250年前のリスボンの地震や、論文では英語圏から発信されているということで2011年のカンタベリー地震を取り上げているものが散見される程度である。

日本の場合は、死者をともなう地震災害は言うに及ばず、火山災害でも過去に多くの犠牲者を出している。もちろん慰霊や学習などの目的でこうした地域に入りたい外国人はたくさんいるものの、英語での発信がないため、アクセスすることが難しい。欧米では日本の情報を知りたがっているにもかかわらず、これまでアプローチをあきらめてきた節がある。

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