アマゾンの物流戦略はここまで徹底している 日本で宅配クライシスを乗り切れた真の理由

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日本では2016年9月、ヤマト運輸で宅配ドライバーの採用が進まなくなりました。そのまま、最繁忙期の12月に突入するわけにもいかず、これまで徹底されてきた「顧客との接点は自社の従業員」という教えが破られました。それでも、サービス残業問題も露呈し、2017年3月に「ヤマトショック」として、多くの消費者にその窮状が知られることになりました。

このヤマトショックはその後、ほかの宅配事業者の便乗値上げもあったり、遅配を叩かれたりして、「宅配クライシス」と名を変えました。

そしてアマゾンも、ヤマト運輸の最大荷主として、他人事でなく、大幅値上げと総量規制を受けることになりました。誰もが、アマゾンが危機的状況に陥ると言っていましたが、私は「アマゾンは、どんな努力をしても乗り切る」と言っていました。そして、実際にそのとおりになりました。

ではどうやって、アマゾンは宅配クライシスを乗り切ったのでしょうか?

地域宅配会社利用が増加

興味深いデータが、ウケトル(再配達問題解決アプリ)から出てきました。2017年4月と2018年4月のアマゾンの宅配会社の利用率です。アマゾンはヤマト運輸への委託比率を71%から49%に減らし、地域宅配会社(デリバリープロバイダ)への利用を5%から20%に増やしたということがわかりました。それまで、日本郵便の利用を大きく増やしたと言われていましたが、そうではなかったことがわかりました。

2017年にも私はメディアで言っていましたが、2015年11月から始まったプライムナウは、このヤマトショックを予見して展開したんだろうと思っています。

『アマゾン、ニトリ、ZARA…… すごい物流戦略 』(PHP新書)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

実際に、この決断がなければ、宅配クライシスをアマゾンは乗り切ることができなかったでしょう。日本のアマゾンは当日配送サービスや、1時間以内配送のプライムナウを展開しながら、ヤマト運輸以外の宅配事業者、とりわけ地域宅配会社の活用を進めてきました。

現在、プライムナウは7社の物流会社を地域宅配会社として育成し、提供エリアを着実に広げています。アメリカではUPSから始まった総量規制を乗り切り、FedExとの取引拡大、地域宅配会社の開拓、USPSとの取引、そして、新たな配送方法の構築に努めてきたアマゾンですから、この宅配ショックを予見し、乗り切る手も着実に打ったのです。

このように、アマゾンは、ロジスティクスカンパニーだとジェフ・ベゾスが言うように、ロジスティクスへの投資を続けています。これによって、アメリカ、日本、ヨーロッパだけでなく、多くの国の小売業界を制覇していくことでしょう。

角井 亮一 イー・ロジット取締役会長兼チーフコンサルタント

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かくい りょういち / Ryoichi Kakui

1968年生まれ。上智大学経済学部経済学科を、3年で単位取得終了し、渡米。ゴールデンゲート大学マーケティング専攻でMBA取得。帰国後、船井総合研究所に入社。2000年に通販専門物流代行会社である当社を設立、代表取締役就任。著書に「物流革命2020」(日本経済新聞社)「日経文庫 物流がわかる<第2版>」「すごい物流戦略」(PHP新書)など

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