LGB「T」をのけ者にする芸能界の"暗黙の了解"

日本ではトランスジェンダーが活躍できない

繰り返しになるが、わたしたちの生きる社会は「シスが一般的、トランスは例外的な存在」という価値観に支配されている。

多くの人が「女/男」と言うとき、「シス女性/シス男性」を指しているし、人を見るときにその人が「女か男か」とジェンダー属性を判断する。テレビ、映画、舞台芸術作品に「女優/男優」が出るときは、基本的にそれは「シス女優/シス男優」が想定されている。

トランスがシスを演じるハードルの高さ

ここで留意しておきたいのが、映画と演劇が求めている「リアル」の違いである。

演劇はセット空間自体からして虚構であることが、あらかじめ観客と共有されている。俳優が椅子を指して「テレビだ」と言えば、その設定が観客に共有されやすい。

一方、映画やテレビドラマの場合は、「わたしたちが生きている世界の延長線上」の手ざわりを作り出せる。観客側からも生々しさが求められる傾向があるため、セットには椅子は椅子として、テレビはテレビとして置かれる。

このように現実の延長線上として見せる映画やテレビドラマだと、トランスはトランス以外を演じることが難しい。映像は、舞台作品以上に現実の俳優自身と地続きのものとして、観客に受け取られやすいからだ。

筆者の経験を通して考えてみると、シス女性より骨格のうえでしっかりしているとか声が低いとか、演技では越えられない身体的な特徴で評価を下されやすくなる。

観客がトランスの演技を見るときには、既存の「女らしさ/男らしさ」にいかに近づけるかどうかが1つの評価基準となっているのではないか。

一方で、シスがトランスを演じた場合、前回の記事で紹介した欧米の映画作品のように、演技として高く評価されやすい。

次ページ日本では活躍しにくいトランス俳優
ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 就職四季報プラスワン
  • 森口将之の自動車デザイン考
  • ネットで故人の声を聴け
  • 井手隊長のラーメン見聞録
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
半導体狂騒曲<br>黒子から主役へ

情報通信に欠かすことのできない半導体。可能性は広がる一方、巨額のマネーゲームの様相も強まっています。国の命運をも左右し始めている激動の業界。日本と世界で今何が起こり、どこに向かおうとしているのかに迫ります。

東洋経済education×ICT