飛行機の働き方改革「1人パイロット」の是非

航空機の「コックピット改革」は進むのか

パイロット1人制への移行は、訓練面でも難題だと、オーストラリアの民間航空機パイロットで航空分野の研究者でもあるスチュアート・ベバリッジ氏は語る。副操縦士の役割は、機長としての責任を担う前の見習いとしてのステップと考えられているからだ。

また乗員数を絞ることによる財務メリットも、限定的な可能性がある、と指摘するのは航空コンサルタントのジェームス・ハルステッド氏だ。航空会社が得るコスト削減の恩恵は、運賃の値下げという形で乗客に還元される可能性が高いからだという。

「長距離路線においては、燃料費や設備投資に必要とする資本コストに比べれば、乗組員の人件費が占める部分は小さい」とハルステッド氏は言う。「パイロット1人分の給与を節約しても、吹き飛んでしまう」

航空会社の利用者も警戒の色を隠さない。UBSのアンケート調査によれば、パイロットが1人で操縦するジェット機に乗っても構わないという回答は全体のわずか13%だった。

改革遂行への障害

こうした懸念にも関わらず、航空機メーカー各社は、コックピットに人工知能(AI)を搭載したり、地上からの意思決定を可能とするようなネットワーク接続などのプロジェクトを推進している。

ただ、安全が至上命題である航空産業において、コックピット乗組員の削減は、相当量のテスト実施と監督当局の認証がなければ実現しない。

航空各社にとっては、現在の保有機体を改造するだけでなく、パイロットの新たな役割を管理するための文化的な変更も不可欠になると、英格安航空フライビーのChristine Ourmieres-WidenerCEOは言う。

「ほとんどの場合、ソリューションを売り込んでくる人々は、変革を巧みに進めることがどれだけ複雑か理解していないし、これは非常に大きな変革だ」と語る同CEO。「いずれは自動操縦のテクノロジーは使えるようになるだろうが、長期にわたるプロセスになる」

メーカー各社は、将来のジェット機がパイロット1人仕様になるかどうかはまだ判断できないとしており、エアバスは新たな推進テクノロジーも考慮する必要があると強調する。

「パイロット1人による運航が絶対に必要だというわけではない、と付け加えておきたい」と語るエアバスのデュモン氏。「だが、航空機の数とパイロットの数とに乖離(かいり)があるという現実によって、それが必要になる可能性はある」

(Victoria Bryan and Jamie Freed  翻訳:エァクレーレン)

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