安倍首相「出馬表明はお盆開け以降」の裏事情 止まらぬ「ゴーイン(強引)グ・マイウェイ」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

総裁選で改憲の是非を論争したいとの発言だけに、記者団もざわめいた。というのも、3月の党大会で首相主導での「改憲案」が提起された際、異議を唱え続けた石破氏の「総裁選の争点とすべきだ」との主張に対し、首相サイドは「党の改憲案はもうまとまったのだから論争は必要ない」と取り合わなかった経緯があるからだ。

首相は会見で「自民党としての憲法改正案を速やかに国会に提出できるよう、とりまとめを加速すべきだと考えている」と付け加えた。この点について首相サイドは「石破氏が主張する『戦力不保持を定義した9条2項の削除』を論破する自信があるからだ」(側近)と解説する。

たしかに、「石破氏の主張は首相案よりさらに過激で、国民の支持も広がっていない」(同)との見方が多く、憲法改正を争点とした総裁選で首相が圧勝すれば、「首相案での早期改憲発議への道が開ける」(自民幹部)のは間違いない。しかも、党内ハト派で改憲に慎重とされる岸田氏への強いけん制にもつながる。

首相はすでに「3選」後の政治日程づくりを見据えているとみられる。豪雨災害の復旧・復興のための補正予算編成を急ぐのも、9月20日投開票が予定される総裁選後の同月末までに内閣改造・党役員人事を断行して、10月初旬にも臨時国会を召集するためだ。

臨時国会冒頭で補正予算を処理する一方で、衆参両院憲法審査会での自民改憲案を軸とする本格審議をスタートさせて、年末ぎりぎりまで3カ月近い会期を確保して、衆参両院の憲法審査会での論議を深める。そうすることで、来夏の参院選前の通常国会終盤に改憲発議を可能にしようとの思惑が隠せない。

来夏に衆参同日選と改憲国民投票のトリプル説

首相が20日の会見で、改憲発議の前提となる「衆参3分の2」に言及したのも、次期参院選までは現状の「衆参両院での改憲勢力3分の2以上」が続くからだ。このため、党内では「首相は総裁選圧勝をてこに参院選前の改憲発議に突き進む意向だ」(細田派幹部)との見方が広がる。「来夏の参院選で『3分の2』を失っても、その前に発議にこぎつけておけば2019年の秋口にも国民投票で改憲を実現できる」(同)という読みだ。

さらに、党内では「一気呵成に年内発議に持ち込めれば、来夏の参院選と同時の国民投票や、衆参同日選と国民投票のトリプル選挙の可能性すら出てくる」(自民幹部)との憶測も出始めている。首相の3選後は、天皇陛下退位に絡む皇室行事や東京五輪の日程などからみて、「衆院解散のチャンスは来夏か2020年秋の2択となる」(首相経験者)とみられており、首相にとって来夏の衆参同日選も有力な選択肢となるからだ。

次ページ強気一辺倒の背景に「野党の無力化」
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事