参院「定数6増」より筋の悪い「特定枠」の正体 自民の公選法改正案は民主主義を壊している

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「合区」は2016年の前回・参議院選挙から導入された(撮影:尾形文繁)

衆議院や参議院の選挙制度は日本社会の変化やリクルート事件のような疑獄事件などをきっかけに何度も見直されてきた。個別にみると失敗もあり、試行錯誤を繰り返している。しかし、改正時にはそれなりにきちんとした理屈があり、与野党を巻き込んで時間をかけて議論され、ある程度国民が納得するものだった。

ところが現在、国会で審議されている参議院の定数などを見直す公職選挙法改正案はこれまで見たことがないほどお粗末なものとなっている。人口が減っている時代に定数を6つも増やしたり、比例代表に「特定枠」というわかりにくい制度を作ったりと、自民党の手前勝手な改正案となっている。その結果、参議院の選挙制度は国民が理解困難な複雑怪奇なものに変質してしまいそうだ。

「合区」をめぐって自民党内に軋轢

近年、参議院は一票の格差をめぐる最高裁の「違憲状態判決」への対応に追われ続けている。格差が5倍前後になっても抜本的な対応をしない国会に対し最高裁は「違憲状態」と認めるだけでなく、「一部選挙区の定数の増減にとどまらず、都道府県単位の選挙方法を改めるなどの抜本的改革が必要」と選挙制度の見直しまで提案している。

ところが国会の動きは鈍い。その結果、参院選が行われると違憲訴訟が提起され、最高裁で「違憲状態判決」が出る。それを受けて国会が格差縮小のための定数是正を行うことを繰り返してきた。ところが都道府県単位の選挙方法は、格差が最大の選挙区(つまり人口が少ない選挙区)の定数が2(選挙のたびの改選数は最少の1)となったときにこれ以上、定数を減らせないという限界を迎える。となると隣県と一緒になって一つの選挙区にするしか方法がなくなってしまう。

2015年の公職選挙法改正は「10増10減」と大幅な定数見直しとなったが、同時に2つの「合区」が初めて導入された。具体的には「鳥取県と島根県」、「徳島県と高知県」が一緒になり、それぞれ一つの選挙区となったのである。この結果、一票の格差は3.08倍となり、2016年の参院選後の訴訟で、最高裁は「著しい不平等状態にあったとは言えない」として「合憲」の判決を出した。

しかし、地方の人口減少などによる格差拡大の流れは止まらないため格差は拡大し、2019年の参院選では3倍を大きく上回る見通しとなった。このままの状態で参院選を行えば、最高裁でまた違憲状態判決が出される可能性は高い。だから自民党が通常国会での成立を急いでいるのだ。

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