参院「定数6増」より筋の悪い「特定枠」の正体

自民の公選法改正案は民主主義を壊している

問題はその改正内容だ。

今回の改正案のポイントは2つある。一つ目は、一票の格差を是正するため、議員一人当たりの人口が最も多い埼玉選挙区の定数を2増やすこと。これによって議員一人当たりの人口が最も少ない福井選挙区との格差は3倍以下となる。今まで通り、格差是正を目的とするだけならこの措置で十分である。

二つ目は、比例代表の定数を4増やすとともに、新たに「特定枠」という制度を設けること。現行の比例代表は「非拘束名簿式」となっているが、特定枠は対象の候補者を名簿順位の上位に置く拘束名簿とする。各党は特定枠をそれぞれの判断で使うことができるとされているが、自民党の場合、「特定枠」の候補者は確実に当選することになる。

なぜこれまでの改正と同じように定数の増減数を同じにしないのか、また「特定枠」などというわかりにくい制度を作るのか。それは、新しい「合区」を作らないことと、すでにある合区ではじき出される現職議員を救済することが目的だからである。

合区となった選挙区は、これまでは選挙のたびに合計で2人の議員が選ばれていたが、合区後は1に減る。したがって二つの県がともに自民党議員の場合、一人が立候補をあきらめなければならない。あきらめた議員の出身県は自分たちが選んだ議員がいなくなってしまうことにもなる。そんなこともあって合区に対する激しい反対論が自民党内や全国知事会はじめ地方自治体などから噴出した。

しかし、今後、一票の格差が拡大することはあっても縮小することはありえない。したがって違憲状態を避けるためには、選挙のたびに公選法を改正して新たな合区を作っていかなければならない。しかし、地方では合区反対論が吹き荒れている。

ジレンマに陥った自民党が最初に考えたのが憲法改正だった。憲法に「参院選挙の選挙区は都道府県ごとに最低1人を選挙で選ぶ」という内容を盛り込むことで、合区を回避するという道筋を考えた。しかし、安倍首相が旗を振って盛り上げた憲法改正の機運は短期間で消えてしまった。そこで急遽浮上したのが今回の公選法改正だった。

「特定枠」で選挙運動もせず当選が確実に

ところがこの改正内容があまりにもひどいのである。どういう点がおかしいか以下に列挙する。

まず「特定枠」だ。特定枠の候補者は各党の比例代表名簿の最上位に位置づけられる。現在の比例区は非拘束名簿式で、各候補者が得た得票数の多い順に当選する仕組みとなっているが、特定枠の候補者はその例外で得票数は関係なく1位、2位に位置づけられる「拘束名簿」となる。つまり同じ比例代表に拘束名簿と非拘束名簿が混在するわかりにくい選挙制度になる。

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