安倍首相「出馬表明はお盆開け以降」の裏事情 止まらぬ「ゴーイン(強引)グ・マイウェイ」

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こうした強気一辺倒の政治日程が浮上してくるのは、野党の無力化が大きな要因となっている。6月10日の新潟知事選で野党統一候補が敗北して以来、参院選に向けた野党統一候補擁立での各党連携には軋轢(あつれき)が目立つ。延長国会が与党の筋書き通りに進んだのも、「本来、兄弟政党であるはず」(旧民進党幹部)の立憲民主党と国民民主党が、主導権争いで足並みを乱したことが与党の強行策を許す原因となったからだ。

世論調査での政党支持率をみても、野党第1党の立憲民主ですらここにきて一ケタ台後半にとどまる結果が多く、国民民主に至っては軒並み1%以下とミニ政党並みなのが実態だ。これとは対照的に、内閣支持率は平均40%以上を維持し、自民党支持率も4割近くで野党の合計と比べてもトリプルスコアが続いている。

こうした状況について、首相寄りとされる大手紙の21日の紙面には「『野党不信任案』を提出したい」との皮肉たっぷりの解説記事まで掲載された。20日午後の衆院本会議での内閣不信任決議案の趣旨弁明で、枝野幸男立憲民主党代表が2時間43分という「新記録」を打ち立てたが、「それしか抵抗戦術がない野党の無力を露呈しただけ」(公明党)であることも否定しようがない。

「赤坂自民亭」批判も被災地視察でかわす

国会の事実上閉幕に至る経過と結末を、揃って21日付け朝刊の1面トップで報じた中央紙の中には、「カジノ法強引成立=森友・加計解明せずー政権答えず国会閉幕」(朝日)という厳しい大見出しもあったが、概して淡々とした報道ぶりが目立った。その一方でテレビ局は、NHKも含め21日朝のニュース番組のトップはいずれも猛暑と豪雨災害で、国会の与野党攻防は付け足しのような扱いだった。「猿芝居のような国会の与野党攻防など視聴者の興味の対象外」(民放報道局幹部)との判断からのようだ。

豪雨災害対応での「失態」としてネットなどで炎上した「赤坂自民亭」騒動も、同じ夜に立憲民主党が酒食を伴うパーティ―を開催していたことが“ブーメラン”となり、マスコミ報道も一過性に終わった。そうした中、首相も週末の21日午前、最大の被災地となった広島県を視察して避難者を激励するなど「災害対応最優先」を実践して、野党などの批判をかわした。側近は「これからも、災害があればすぐ視察に出向く。総裁選での地方票対策にもなるからだ」と胸を張る。

シナリオ通りに進んだ延長国会での首相にとっての「唯一の誤算」は、11日から18日までの欧州・中東歴訪の取り止めだった。しかし、首相が国内にとどまったことで、「国会運営は日程的にゆとりができ、週末の予備日も必要なくなった」(自民国対)のも事実だ。野党は「災害よりカジノか」と叫び続けたが、過去の例をみても「大災害は対応さえ誤らなければ、政府の得点になる」(首相経験者)ことが多く、災害対応にも踏み込めない野党の「口先だけの批判」(自民幹部)は国民の心にも響くはずがない。

「圧勝での3選は確実」と読む首相サイドは、「史上最長の安倍政権で憲法改正を実現し、東京五輪も成功させれば3年後の任期切れまで1強首相が続く」と自信満々だ。石破氏ら対抗馬をかつぐ自民党内の反安倍勢力も「このままでは来夏の参院選も自民が勝ち、首相の1強体制は崩れない」とあきらめ顔だ。このため、永田町には「3選後の政局波乱は首相の体調不良しかない」(竹下派幹部)と慨嘆する声が広がる。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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