「複数恋愛」を実践する30代女性の生きづらさ

「ポリアモリー」を人に打ち明けるのは難しい

そんなわたしが、ようやく家族に「ポリアモリー」という言葉を使って自分のことをカミングアウトできたのは、30歳を過ぎてから。

「OUT IN JAPAN」という、5年間で1万人のLGBTポートレート撮影を目指すカミングアウト・フォト・プロジェクトに参加したことがきっかけでした。

母親は、わたしの話を落ち着いて聞いてくれましたが、最後に「ひとりで生きていくならポリアモリーもいいけど、子どもはつくらないほうがいい」と言われたときは、何ともやるせない気持ちになったことを覚えています。

けれどある日、実家に帰省したわたしに母親が2冊の本を差し出してきました。深海菊絵『ポリアモリー 複数の愛を生きる』と坂爪真吾『はじめての不倫学「社会問題」として考える』。どちらの本にもポリアモリーが取り上げられていて、母親は新聞の書評欄で「ポリアモリー」の言葉を見つけ、これらの本を読んだと言います。

このようなかたちで、ポリアモリーについて知ろうとしてくれているのは、わたしにとっては涙が出るほどうれしいことでした。

マイノリティにありがちな偏見への違和感

友人たちの反応は千差万別です。

最も多いのが「複数の人を同時に好きになっちゃうなんて、まだ本当の『好き』を知らないだけだよ。本当の恋愛をすれば、その人しか目に入らなくなるものだよ」という意見。これ、実は逆に「ひとりしか好きにならないなんて、まだ本当の『好き』を知らないだけだよ」と裏返しの主張もできてしまう(そしてどちらの主張にも、何の根拠もない)のです。それに気がつかず、モノガミーが唯一の正しい愛し方だと無邪気に信じている人がいかに多いことかと改めて思います。

かと思えば「つまり、誰にでも体を許してしまうってこと?」と聞かれたり、性的な話題ばかりに偏った反応に苦笑いすることもしばしば。

このあたりはポリアモリーに限らず、LGBTなどのマイノリティがよく向けられる「(悪意のない)偏見や差別」「性的な話題にかたよった興味」なんだなと感じます。

『わたし、恋人が2人います。~ポリアモリー(複数愛)という生き方~』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

それから「ポリアモリーという人がいるのはいいけど、自分は無理だし、自分の恋人がポリアモリーだったら耐えられない」「ポリアモリーはポリアモリー同士だけで恋愛してほしい」と言われることもあります。

実際にはポリアモリーとモノガミーのカップルもたくさんいるし、モノガミー同士で恋愛したところでうまくいくとは限らないのと同じように、ポリアモリー同士で恋愛すれば平和というわけでもないので、こういった意見をもらうと「気持ちはわかるけど、そんなこと言われても……」とモヤモヤしてしまいます(こういう意見のなかの「ポリアモリー」を「モノガミー」に置き換えてみると、わたしのモヤモヤが少しわかってもらえるかもしれません。ポリアモリーであってもモノガミーであっても、相手を選んで好きになったりならなかったりすることは、少なくともわたしにはできないのです)。

一方で「自分もポリアモリーかも……」「誰でもある程度は、複数の人を同時に好きになるものなんじゃないのかな……」という反応をもらうこともあり、それが意外と多いことに驚かされたりもします。

わたし自身は、複数の人を同時に好きになるなんて世界で自分だけなんじゃないかと誰にも言えずに悩んだ時期が長かったので、共感されるということは身にしみてうれしいものなのです。

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