アジア最高の経営者が、中国から逃げ出すワケ
「超人」李嘉誠が試みる「脱亜入欧」

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李嘉誠は潮州人だ。潮州人は日本では知名度は高くないが、東南アジアでは福建人、広東人に並ぶ一代勢力で、独自の金融・物流ネットワークを張り巡らしていることで知られる。李嘉誠は広東省と福建省の境界にある潮州で1928年に生まれ、日中戦争のさなかに家族とともに香港に逃げた。

家は非常に貧しく、高校も卒業できずに働くことになった。戦後の香港で造花を売って稼いだ資金で、不動産会社「長江実業」を設立。現在に至るまで長江実業の社名は李嘉誠の成功の象徴となっている。

鄧小平、江沢民の信頼を獲得

李嘉誠のビジネスの特徴は「逆張り」の一言に尽きる。

1967年の香港暴動で暴落した香港の土地を買いあさって、その巨大ビジネスの基礎を築いた。1989年の天安門事件では、皆が中国から逃げ出すところを逆に中国進出を加速させて、鄧小平、江沢民の信頼を獲得し、中国の発電インフラなどの大型案件を次々と引き当てた。

なにしろ、長江実業など傘下のグループ企業は、香港の株式時価総額の3分の1をコントロールしている。李嘉誠の名前をもじって香港を「李家城」と呼ぶぐらいだから、その行動の影響力は香港経済、そして、中国経済をも直撃するインパクトを持ちうる。

香港では、英国統治時代から中国返還後の現在に至るまで、真の意味で香港人の政治権力が存在したことはない。徹頭徹尾の経済都市であり、香港経済のトップ、すなわち香港のトップはいつも李嘉誠であった。

そんな李嘉誠氏のグループは、この数カ月で、香港のビジネスセンター、電力企業、香港のスーパーマーケットチェーン「百佳超級市場」、上海の東方匯 經センター、広州ショッピングセンターなどを売却するか、売却する方針を明らかにした。その総価格は400億香港ドルを超える見通しだ。

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