財政の「ゆでガエル状態」は、どれだけ危険か 最後は増税しても社会保障費削減の悪夢に

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問題なのは、PB黒字化を達成できなかったこれまでの計画と同様、今回の計画も楽観的な経済見通しを前提としていることだ。このため、多くの経済学者は、新計画でも目標を達成できそうにないと見ている。また、「黒字化の目標が設定された2025年度までは、消費税率を10%超にする議論すらできないかもしれない」(東京財団政策研究所の森信茂樹研究主幹)との指摘もある。

では今後、実際の日本財政はどのような経路(パス)を描くのか。これについて参考となるのが、財政試算で示されたもう一つの「ベースラインケース」の試算値だ。「ベースラインケース」とは、足元の潜在成長率並みの経済成長を前提とするもので、中期的な経済成長率は実質1.2%程度、名目1.7%程度。「成長実現ケース」より現実的な想定となっている。

2018年2月22日の東洋経済オンライン記事「安倍政権の財政推計はやはり『粉飾』に陥った」で論じたように、過去の財政試算とPBの実績値を比較すると、実は「ベースラインケース」での試算値ですらPBの実績値より楽観的な数値だった年が多かったのが実態だ。そのため、今回の「ベースラインケース」でも多少楽観的となる可能性は高い。だが、ほかに材料がないため、ここではこれを基に将来の日本の財政を占ってみる。

では、「ベースラインケース」が示す日本の財政の将来像を見ていこう。

PBは2017年度に対名目GDP(国内総生産)比マイナス2.9%だった。「ベースラインケース」の予想ではこの赤字は今後、緩やかに縮小するものの、政府の黒字化目標の2025年度でもマイナス1.3%と赤字が残る見通し。旧計画で黒字化目標年だった2020年度のPBについて、今回の財政試算では、マイナス1.5%が見込まれている。2025年度のPBも、実際には「ベースラインケース」並みの1%台の赤字となる可能性は低くないだろう。

物価が上がらず、長期金利は低いままの前提

もう一つの重要指標である公的債務等残高(対名目GDP比)に注目していこう。公的債務等残高は、国・地方が抱える借金のストックを示しており、これが制御不能の形で一方的に増えていくことを「発散」と言い、事実上の財政破綻の状態に近いと考えられる。

今回の財政試算では、足元の潜在成長率や物価上昇ペースが鈍化したことにより、前回試算に比べ、前提となる経済成長率は若干下方修正されている。これは、公的債務等残高(対名目GDP比)が上昇する要因になるはずだが、実際の試算値はむしろ引き下げられている。その秘密は長期金利の引き下げにある。

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