財政の「ゆでガエル状態」は、どれだけ危険か 最後は増税しても社会保障費削減の悪夢に
日本財政の「ゆでガエル」現象は、放っておけば2020年代後半まで続きそうだ。
ゆでガエルとは、ゆっくりと変化する危機に対応することの難しさを説く警句のこと。カエルを熱湯の中に入れれば驚いて飛び出すが、常温の水に入れ徐々に熱するとカエルは気づかないうちにゆであがって死んでしまうという例え話だ。
1000兆円という先進国で最多の国の借金。社会保障費の増加などに対し、税収や社会保険料収入では賄えず、現在も毎年20兆円台の財政赤字を垂れ流している。しかし、日本が経常収支黒字国で、国内の資金で国の借金を賄うことができていること、さらに日本銀行の異次元金融緩和で超低金利が維持されていることから、今すぐ財政危機が起こるような状況ではない。
こうした中、安倍晋三政権は消費増税を2度延期したり、増税使途の一部を借金返済から教育無償化に変更したりするなど、財政健全化への取り組みを後退させた。国民の間でもかつてはあった財政に対する危機感が、確実に薄れてきている。まさにゆでガエルのようだ。
だが今後、消費税率の10%超への引き上げなどの負担増の議論や実施を先送りすればするほど、最終的には、膨らんだ国債の利払い費に増税収入の多くを持っていかれ、社会保障の維持・強化に使える分は減っていくのが現実だ。借金がさらに膨らむ前に、早く負担増に舵を切ったほうが、負担した分が社会保障などの形で国民に返ってくる分が多くなる。現在のようなぬるま湯の状態で、日本人はこのことに気づくことができるのだろうか。
2025年度PB黒字化の前提も楽観的すぎる
こうしたぬるま湯の状態は長期化する見通しだ。
7月9日、内閣府は最新の「中長期の経済財政に関する試算」(以下、財政試算)を公表した。安倍政権が6月に閣議決定した『経済財政運営と改革の基本方針2018』(骨太方針2018)として打ち出された「新経済・財政再生計画」を受けてのものだが、これを見ると経済がほどほどの成長を続ければ、物価上昇ペースの遅さから日銀の異次元緩和がさらに長期化し、財政危機は顕在化しない姿が描き出されている(後述する「ベースラインケース」において)。
新経済・財政再生計画で安倍政権は、2025年度の国・地方を合わせたPB(プライマリーバランス、基礎的財政収支)黒字化の目標を打ち出した。財政試算で示された、アベノミクスの成功と高い経済成長を前提とする「成長実現ケース」(中期的な経済成長率が実質2%程度、名目3%台半ば)では、2027年度にPBが黒字化する見通しだが、この試算に織り込まれていない歳出改革にこれまでと同程度に取り組むとすることで、2025年度に黒字化を達成させる考えだ。
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