出光・昭和シェル統合、国内「2強」体制の意味 国内の装置産業に残された道はなかった

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縮小

来春以降、出光の取締役会には出光と昭シェルからの3名、創業家が推薦する2名が入る予定。寄り合い所帯で、意思決定が遅くなるおそれもある。その間もJXTGは着々とシナジーを積み上げるはずだ。出光・昭シェルにとって“3年のブランク”が重くのしかかる可能性はある。

今後も需要縮小が止まるわけではない。経産省の試算によると国内ガソリン需要は、2022年度には2017年度比で1割減る見通し。その中で「次の精製能力削減にどう手を打つかがカギになる」(大和証券アナリスト・西川周作氏)。

現在は出光が三つ、昭シェルがグループで四つの製油所を持つ。昭シェルの亀岡社長は「製油所の競争力はアジアでもトップクラス」と統廃合は見込んでいないとする。ただ、ガソリンなど軽質油の生産比率を増やす設備が十分でない製油所を中心に、今後決断を迫られる場面は出てくるだろう。

コスモの動向が焦点

業界では「今回の出光・昭シェルで業界再編は当面打ち止め」と見る関係者が多い。その中で焦点となるのが、シェア14%を持つコスモエネルギーホールディングスの動向だ。

同社は2011年の東日本大震災で千葉製油所が被災した影響などで財務が傷んでいる。財務の健全性を示すDEレシオ(負債資本倍率)は、JXTG、出光・昭シェルが1倍以下なのに対し、コスモは2.3倍。財務体質強化を急ぐが、石油市況が悪化すれば、経営危機に直面するリスクがある。

風力発電など事業の多角化も図るが、それだけでは力不足だ。化学など他業界の企業との提携を模索する可能性もある。需要縮小の中、残された時間は多くはない。

大塚 隆史 東洋経済 記者

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おおつか たかふみ / Takafumi Otsuka

広島出身。エネルギー系業界紙で九州の食と酒を堪能後、2018年1月に東洋経済新報社入社。石油企業や商社、外食業界などを担当。現在は会社四季報オンライン編集部に所属。エネルギー、「ビジネスと人権」の取材は継続して行っている。好きなお酒は田中六五、鍋島。

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