前代未聞の「危険な集中豪雨」が起こった理由

梅雨前線に台風、さまざまな要因が同時多発

7月4日~7日の天気図。6日時点では台風7号から変化した温帯低気圧が日本海にあり、太平洋に高気圧がある。梅雨前線が日に日に大きく伸び、これらが豪雨の要因になったとみられる(写真:気象庁提供)

台風7号の勢力がそれほど発達しなかったために、通常であれば台風に巻き込まれて減少するはずの水蒸気がそのまま残ってしまった。これにより、海面温度が30度近い沖縄近海で分厚い積乱雲が次々に湧き続けた。これが縁辺流に水蒸気を絶え間なく供給。水蒸気を豊富に含んだ縁辺流が梅雨前線にぶつかって広範囲に大量の雨を降らせた可能性がある。

40人の死者を出した昨年7月の九州北部豪雨の原因は、線状降水帯だった。これは、幅20~50キロメートル程度、長さ50~300キロメートルの狭い範囲で短期間に大量の雨を降らせるもの。今回の広域にわたる豪雨のメカニズムは、このときとは異なる。

大雨では異例、気象庁の事前警戒呼びかけ

この異変を認識した気象庁は7月5日14時に、「8日にかけて西日本から東日本にかけて広域で記録的な大雨が降る見込みであり、土砂災害や低い土地での河川の氾濫について厳重な警戒が必要」と呼びかけた。台風や豪雪以外でのこうした事前の警戒の呼びかけは珍しく、ことに大雨だけのケースでは異例といっていい。

気象庁の桜井美菜子・天気相談所長は、過去のパターンや、数値予報が安定して悪い状態が続く点、水蒸気の流れ込みの多さなどから、「5日ほど前から警報級の可能性があると考えていた」と話す。

「数値予報モデルを使って、(気圧配置などさまざまな気象)条件を変えるシミュレーションを行ったが、通常は同じ時点の観測データを使っても結果にばらつきが出るのに、今回は測定日の違うデータを用いたシミュレーションにもかかわらず、すべての結果が一致した(豪雨の予報になった)。このようなことはめったになく、早期に警戒を呼びかけるべき、と腹をくくった」(桜井氏)。

翌7月6日には18時に福岡、佐賀、長崎、20時40分に広島、岡山、鳥取、23時50分に京都、兵庫と、矢継ぎ早に特別警報が発表されている。

気象庁では今年6月5日から新しいスーパーコンピュータの運用を開始しており、計算能力は従来比で10倍となった。また、数値予報モデルの改良も絶え間なく行っている。早期の警戒呼びかけの裏にはそうした成果もあったとみられる。天気予報は当たらない、とタカをくくることなく、警戒情報が出たときにはいち早く対策を取るよう、多くの人が意識を変えるべきなのかもしれない。

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