「在韓米軍の撤退」が現実的とはいえない理由

朝鮮国連軍の解体のみ行われる可能性が高い

在韓米軍の役割が大きく見直されようとしている(写真:Kim Hong-Ji/REUTERS)

6月12日に行われた史上初の米朝首脳会談を踏まえ、米国のドナルド・トランプ大統領が米韓合同軍事演習の中止を表明した。さらに在韓米軍の将来的な削減や撤退を改めて示したことで、米韓同盟の弱体化や、日米安保を含む東アジアの安全保障体制の先行きを懸念する声が内外で高まっている。

また、4月27日の南北首脳会談では、いまだ停戦状態にある朝鮮戦争(1950~53年)について、「休戦協定締結から65年になる今年に終戦を宣言し、休戦協定を平和協定に転換する」と合意された。では、休戦協定が失効し、平和協定が結ばれれば、既存の在韓米軍や朝鮮国連軍はいったいどうなるのか。

結論から言えば、在韓米軍の撤退は近い将来には現実的にありえない。朝鮮国連軍の解体のみが行われる可能性が高いと筆者はみている。

米韓合同軍事演習の中止をどうみるか

米国と韓国は先週末、8月に予定していた定例の米韓合同軍事演習「ウルチ・フリーダム・ガーディアン」(UFG)に加え、7~9月に予定されていた2つの米韓の海兵隊交流訓練(KMEP)を無期限で中止することを明らかにした。米朝の信頼醸成を促進し、今後の外交交渉を支援するためだと説明している。

合同演習の中止の理由について、トランプ大統領は12日の米朝首脳会談後の記者会見で、米韓合同軍事演習を「ウォーゲーム」と呼んだうえで、膨大な資金を米政府に費やさせていると指摘した。軍事演習を継続することは「挑発的」かつ「不適切」で「多額のカネがかかる」とも述べた。

トランプ政権の合同軍事演習の中止表明については、早速ワシントンからも反対の声が上がった。

下院軍事委員会の民主党代表、アダム・スミス議員は声明で、「北朝鮮のあいまいで制約のない非核化の約束と引き換えに、米軍の即応態勢を譲ったように思える」と批判。「米国が朝鮮半島周辺で同盟国や友好国と実施する演習は、潜在的な北朝鮮の侵略に対する準備態勢を維持するための非常に貴重なツールだ」と述べた。

その一方で冷静な見方もある。米海兵隊の元大佐で、日本戦略研究フォーラムのグラント・ニューシャム上席研究員は筆者の取材に対し、「(ウルチ・フリーダム・ガーディアンのような)『名前付きの演習』を当面延期することは、北朝鮮が非核化に本気であるかどうかを確かめるうえで、われわれにとって受け入れ可能なリスクだ」と話した。

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