ヤマト「クール宅急便」常温仕分けのナゼ  社内違反事案が過去にも発生。問われる経営責任

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ヤマト運輸では、2000年から「530(5分以内、30秒以内)仕分け」といわれるクール宅急便を仕分ける際の社内基準時間ルールを実施している。

これは、(1)コールドボックス1本(荷物は30~50個程度入る)当たりの仕分け作業時間(コールドボックスから荷物を取り出す時間)を5分以内、(2)宅急便センター仕分け時(コールドボックスから運送車両に積み替える、もしくはコールドボックスからクール仕分け用コンテナに積み替える)に外気に触れる時間として30秒以内と定めている。

クール宅急便の輸送は、(1)ベース(全国69カ所の主管支店)間の幹線輸送、(2)ベースと管轄下のセンター(営業所)間、(3)営業所と顧客間、の大きく3つに分かれる。うち、ベース間の幹線輸送とベース-営業所間は、冷凍・冷蔵の保冷機能のある「コールドボックス」で運ぶ。ベース内では大型の「クール宅急便仕分け室」が用意され、そこで荷物を仕分ける。だが、営業所には設置スペースの問題もあって同様の大型仕分け室がなく、コールドボックスから仕分けする際に外気に触れるため、「530仕分け」の社内基準を設けていた。

徹底していなかった社内ルール

25日に同社が全国約4000ある全営業所に実施した緊急聞き取り調査によると、規定時間を超えて荷物を常温にさらしているなど、「530仕分け」の社内ルールを順守していなかった営業所が全国約200カ所(全営業所の約5%)にのぼったことが判明した。同社広報課によると、「朝日新聞からの映像や聞き取り調査からの結果を踏まえ、『530仕分け』を改めて検証する必要がある。仕分け作業を行う現場人員の問題以上に、最終的に作業全体を管理・チェックする機能が働いていなかったことが大きい」としている。

営業所などの現場からは「お中元やお歳暮などの繁忙期には人手も足りず、社内基準とおりに運用できないことが多い」との声も聞かれる。同社では現在詳細な調査を開始しており、この「530仕分け」が運用上順守できない状況があるなら、その要因を調査し、場合によっては、「530」仕分けの基準内容そのものを見直すなど、抜本的な改善策を11月中に打ち出す意向だ。

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