働き方改革で大ブーム、「RPA」の期待と現実 導入企業が急増、「事務職」がなくなる?

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遠州信金はRPAを地元企業の支援策にも活用しようとしている。昨年12月より、地元企業向けに「RPA説明会」を開催。自らの導入実績も踏まえ、RPAの効果を説明する。

RPAによって無人化されたオフィス(写真:NTTデータ)

「地方では都市部以上に人手不足が深刻。中小企業では手書き書類も多く、効率化の余地は大きい。導入事例はまだだが、地元企業の関心は高い」。遠州信金の鈴木靖常務理事はそう語る。マイナス金利政策が続く中で、信用金庫にとり融資以外の手数料収入の拡大が急務。そのためには地元企業との関係性を従来以上に強く持つ必要がある。遠州信金はそのツールとしてRPAを活用する考えだ。

問われる企業の主体性

ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)傘下で、首都圏中心に食品スーパーを展開するマルエツ。同社では5月中旬から2カ月間、仕入れ情報の伝票への記載と交通費精算時の経路確認の2業務でRPAの試験運用を開始した。導入したばかりで効果はこれからだが、マルエツの本間正治執行役員は「RPAを導入した2業務では作業量の8~9割を削減できる」と見込む。

マルエツは2015年3月に同業のカスミ、マックスバリュ関東と経営統合し、USMHを設立した。管理部門を統合、仕入れの一本化なども推進しており、業務全体の見直しの最中だった。本間執行役員は、「業務の棚卸しをして整理しないままRPAを導入しても、結局非効率になると感じた」と話す。

住宅最大手の大和ハウス工業では2016年末から、業界で先駆けて勤怠管理や営業資料の作成などでRPAの活用を始めた。

ただ、RPAの導入は現状10数本にとどまり、今後も急ぐつもりはないという。松山竜蔵J-SOX推進室長は「RPAは人手のかかる仕事を自動化する部分最適ツールにすぎない。業務システム全体をどう構築するか、また空いた時間にどんな仕事をするのか、しっかり決めていかないと意味がない」と指摘する。同社ではグループのRPA導入ルールを策定し、安易な導入を避けるとともに、ソフトの内製化も進める。

昨年から認知度が一気に高まったRPA。だが、ある業界関係者は「せっかく導入したのに例外作業の処理に手間取り、人手に戻ったケースもある。導入企業にはシステム部門だけでなく他部門も巻きこんだ取り組みが必要」と指摘する。

「RPA導入」という旗印を掲げるだけでは意味がない。業務全体、そして社員の働き方をどう変えるのか。そこに企業の主体性がなければ、単なるブームに終わる懸念もある。

遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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