ドラッカーの経営原則は株投資にも活かせる 顧客満足や従業員など無形資産にフォーカス
――ドラッカー研究所の成り立ちからお話しください。
1999年にドラッカー夫妻が米クレアモント大学院大学の中にアーカイブを作ったのが、始まり。ドラッカーの論文や書簡、書籍の原稿などを集め、研究者が活用できるようにしたものだ。ドラッカーはつねに先を考える人で、自分が亡くなった後にやってほしいことをまとめて書いていた。それは、自分自身の経営哲学や原則を実際の経営面でも実践してほしいというものだった。われわれ後の世代の研究者にとってはそれをどう実現するかが課題になった。
――それが昨年末に初めて発表した米国企業マネジメント・ランキングにつながったのですね。
ドラッカーの教えは時代を超え、彼の言う経営の効果性(エフェクティブネス)は、国や業界の違い、技術の変化を問わずに普遍的に当てはまるものだ。それというのも、人間そのものの要諦を深いところで理解していたからだと思う。しかしながら、人々の経営学の学び方は時代とともに変わってきている。彼の本は現在も人気があるが、もっと付加価値の高い研究内容としてデータを求めるようになってきている。
ドラッカーの経営哲学を広めるために、われわれのアプローチは3つある。第1は、ドラッカーの本を読んだり話したりすること。これはドラッカー存命中にもできていたことだ。第2に、ドラッカーの基本原則を、現代の経営者が求める数字に変換して、提供すること。そして第3に、それを財務や業績などおカネと関連したデータにすることだ。
無形資産のデータにフォーカス
――ドラッカーの原則に基づいた企業のスコア化とは、どのようなものですか。
企業には有形資産のデータと無形資産のデータがある。有形資産とは工場や機械設備などだが、要するにおカネのことだ。反対に無形資産は、従業員や顧客、アイデア、社会との関係など人間に関連することだ。ドラッカーは若いころに英ケンブリッジ大学に行き、よくケインズの講義を聴いたそうだ。そこでドラッカーがケインズから学び、気づいたことは、エコノミストは商品そのものの動きを気にかけるが、重視すべきは人間そのものの行動であるということだった。
エコノミストは、計測のしやすさもあり、もっぱら有形のモノやおカネの計測を行う。だが、われわれはドラッカーの原則に基づき、無形資産のデータにフォーカスしている。顧客満足や従業員エンゲージメント(関与)・人材開発といった無形資産があって、そこから最終的におカネ(利益)は生まれてくるものだ。
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