北朝鮮にとって「米国との融和」は自殺行為だ リビア・イランの非核化から見えて来る未来

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対してイランはいまだ、核兵器保有をあきらめていない。完全には欧米に屈していない。その姿勢を国民に見せることが重要だということを知っているからである。

北朝鮮はイラン・リビアに何を学んだか

北朝鮮は金日成主席以来、政治の自主や国防の自衛を主軸とするチュチェ(主体)思想が国家イデオロギーの根幹を成す。その「革命の遂行のために人民は、必ず首領の指導を仰ぐ」とするその思想は、信仰にも似ている。

1953年7月、冷戦初期最大の紛争「朝鮮戦争」がひとまずの「休戦」状態となった同国において、チュチェ思想は、アメリカや日本と敵対し、韓国との戦争に入った人民の心の拠り所であった。

その北朝鮮とリビアおよびイランとを、すべて同列比較することはできない。だが、偽善的な力を振りかざす「大国の論理」に背を向け、配給制や補助金制によって人民を食べさせ、教育を施し、国民の尊敬の念を集めてきたという点では、明確な共通点がある。

外の情報を遮断し、内においては上層部の特権が暴かれないようにしながら、警察権力を発達させてきた点でも似通っている。北朝鮮の体制維持の要諦は、国民がチュチェ思想に疑いを挟まない程度に、アメリカの譲歩を引き出しながら話し合いを進めていく、という点にある。

北朝鮮は、5月24日に豊渓里にある核実験場の爆破を行ったが、核実験場は全部で4カ所あるといわれている。今後もアメリカの要請のすべてを聞き入れてはいかないだろう。欧米諸国は北朝鮮を侮ってはならない。

核兵器は、イスラエルやインド、パキスタンも所持している。リビア、イラン、北朝鮮が保有を制限されるのはなぜか。欧米諸国と敵対している、というただ一点にその理由がある。

欧米諸国は、むき出しの権力ではなく、国連憲章など国際「法」を彼らが拒否権を有する国際連合安全保障理事会で「私的に」運用し、法規範の解釈権を事実上掌握して支配を強化してきた。そうした恣意的な法の適用は、不正義の念と憤りを深化させるだけだ。中東はその不正義が長年においてまかり通ってきた希有な地域である。

そのような恣意的な法の適用が、北東アジアにおける永続的な平和をもたらしてくれるだろうか。 北朝鮮の存在もまた同様にこの力による国際政治の犠牲なのだ。 その根本が変わらなければ、国際社会は常に新しい脅威に立ち向かわざるを得なくなるに違いない。

福富 満久 一橋大学大学院社会学研究科教授

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ふくとみ みつひさ / Mitsuhisa Fukutomi

1972年福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。2005年早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。2010年同博士後期課程修了(博士 政治学)。その間、2009年パリ政治学院(Sciences Po)プログラム・ドクトラル修了(Ph.D. 国際関係学)。2012年一橋大学大学院社会学研究科准教授、2015年より現職。2015年8月~2016年3月カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)オルファレア国際問題研究センターリサーチフェロー。著書に、『中東・北アフリカの体制崩壊と民主化』(岩波書店、2011年)、『L’autoritarisme dans la structure politico-economique internationale』(Dictus Publishing, 2012)、『国際平和論』(岩波書店、2014年)、『Gゼロ時代のエネルギー地政学――シェール革命と米国の新秩序構想』(岩波書店、2015年)など。

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