食肉機械の「なんつね」、トップシェアの秘密 「町のお肉屋さんが儲かるビジネス」を意識

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筆者もこのお店に伺い、オリジナルのソーセージを試食させてもらいました。これが、カリカリという独特の食感。実は中にピスタチオが入っているとのこと。まさに、初めてのソーセージ体験でした。こんな独特の商品を陳列し、そのうえおいしいので、近所の主婦たちにも大人気。南社長は、そんなオリジナル商品へのこだわりをこう語ります。

「あるソーセージ店で初めて自家製ソーセージを食べた時、こんなにおいしいソーセージが世の中にあったのか、と感動しました。ソーセージに対する概念が一変するような商品を、1つずつ丁寧に手作りしてお客様に届けたいと思っています」 

店名に使われている「モースト」はロシア語で「架け橋」という意味。メーカー、販売店、そして顧客の懸け橋になりたいとの思いが込められています。ミート・デリ・モ~ストで実際に販売している商品を味わってもらうことで、自分たちも作りたい、という具体的な相談も急増しているそうです。

世界各国に代理店網

「社是を『知恩報恩』としています。周りから受けた恩を知り、その恩に報いる、という意味ですが、私の代になってからの社是です。自社の製品を販売することが起点ではなく、長年お世話になっているお客様への恩返しを第一に考える、ということです。ある時、何千万円もする機械のオーダーがありました。けれどそれを、現場の営業マンは断ったんですね。そのお客の環境改善で機械を導入しなくても能率アップができると考えたからです。短期的には売り上げになりませんでしたが、長期的にはおカネで買えない信頼を築くことができたと思っています」

南常之社長(筆者撮影)

現在、会社の事業案内には、食肉機械器具の製造・販売という基幹事業のほか、「食品工場づくりのご提案」「商品企画のご提案」という業務が掲げられています。機械を売る前に顧客の売り上げ、利益を上げる提案をしようと、テクノロジー、エンジニアリング、コンサルティングの3本柱を打ち出しているのです。

ネットワークも、日本国内から世界に拡大。中国、韓国に工場を持ち、アジア、オセアニア、北南米、スウェーデンなど世界各国に代理店網を張り巡らせています。

「日本食がブームになっている、その追い風に乗っていけたら、と考えています。日本の薄切り肉を食べる食文化を広めていきたい。ほんまもんの食の世界を日本から世界に、そして世界から日本に紹介したいと思っています」

永続できる企業になるため、顧客と社員の意見を反映する会社を目指す。そして日本のトップメーカーから世界を駆け抜ける「真のオンリーワン企業」になる。そんな若社長の心意気を応援したいと思います。

竹原 信夫 日本一明るい経済新聞 編集長

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たけはら のぶお / Nobuo Takehara

有限会社産業情報化新聞社代表取締役(日本一明るい経済新聞編集長)。1971年3月、関西大学社会学部マスコミ学科卒、同年4月にフジサンケイグループの日本工業新聞社に入社。その後、大阪で中小企業担当、浜松支局記者などを経て、大阪で繊維、鉄鋼、化学、財界、金融などを担当。1990年4月大阪経済部次長(デスク)、1997年2月から2000年10月末まで大阪経済部長。2001年1月に独立、産業情報化新聞社代表に。年間約500人の中小企業経営者に取材、月刊紙・日本一明るい経済新聞を発行している。
 

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