「女性のキャリア支援がやりたいんです」と言い続けていたら、とある女性社長が「きっと話が合うと思う」と、国際協力銀行、ボストンコンサルティンググループ、リクルートを経て起業の志を温めていた米倉史夏につないでくれた。別の女性もまた、「私のルームメートがいいアイデアを持っている」と、リクルートキャリアのエース営業だった河京子を紹介してくれた。
「定性的な言い方ですけれど、3人でしゃべっているのが不思議なくらいしっくりきたんです。学生に戻ったようで、とにかく楽しくて」。未来合宿と称して箱根の温泉へ行き、3人で未来予想図を書き出していたら笑いが止まらなかった。3人で描いた未来が楽しくて仕方なかった。
「この3人なら」との確信がそれぞれに芽生え、全員が同額出資するという「チーム創業」の形をとった。弁護士、税理士、経営コンサルタントには軒並み「経営判断が拮抗したときにどうするのか。安定した経営ができなくなる」と止められた。でも3人の誰かがリーダーになって、1人だけ特別な役割を担うのは違うという感触は確かだった、と田中は述懐する。結果、3人全員が「Waris共同創業者」を名乗り、米倉が経営管理、田中が広報・マーケティング、河が営業を統括し、現在に至る。
米倉も言う。「チーム創業なんて珍しいとあちこちで言われますが、相性としか言いようがないんです。お互いのコミュニケーションのスピードやクオリティには、それまでのバックグラウンドや就職した1社目のカルチャーが大きく影響するものですが、そこに違和感がなかった」。
メールへの返事が半日以内なのか24時間なのか1週間なのか、ある課題をどれくらいの工数で仕上げるか、そこに小さなズレがあるとやがて大きく積もってしまう。だが起業に際して箔を付けるため、田中いわく「まるでミスコン荒らしのように」ビジネスコンテストを受けては数々の受賞歴を重ねていった3人は、その準備過程を通して「やりやすい」「仕事しやすい」との実感を深めていった。創業以来5年、折々に「この3人だからうまくいくんだな」とお互いが感じるチームワークというのも、希有なものだ。
「事業内容での意思の一致ももちろんですが、それ以上に3人共通の起業目的がIPOなどでなく『自分が自分らしくあること』であったことも大きいと思います」(米倉)
起業目的が「自分らしくあること」。女性的な不思議な起業、と称されることもあるが、本人たちには何一つ不思議ではないのかもしれない。本の出版やテレビ局の取材など、あの未来合宿の夜に3人で書き出した夢はこれまでほぼすべて叶っている。
理念にフリーランス事情がついてきた
田中が担当役員として参加するマーケティング会議で、社員たちからは「今年3~4月で市況感が変わった」との発言が出た。Warisへの検索流入に異変があり、認知度が上昇している手応えがある。メディアでフリーランスや副業(パラレルキャリア)という言葉を見ない日がない。雑誌で副業特集が組まれる。この就職売り手市場にあってなお、新卒フリーランスという働きかたに注目が集まる。フリーランスや副業をめぐる興味関心が高まり、大きな波が来ている。
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