日本は独自の対北朝鮮外交を模索するべきだ 安倍首相は「100%米国と共に」と言うが…

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現状はどうか。米国から「体制の保証」を取り付けた北朝鮮が、日本との関係改善に進む動機は大きくはない。しかし、非核化をめぐる米朝の交渉は難航必至だ。米国が非核化の時期や方法を明確にするよう迫っても、北朝鮮が簡単に核を手放すはずはないからだ。その過程で米朝関係が再び緊迫する可能性も少なくない。その際、日本が2002年の時のように日朝関係の改善に踏み込めるかどうかが焦点となる。

「中短距離ミサイル」「拉致問題」で米国を頼れない

安倍首相は、北朝鮮問題で「日本は100%米国と共にある」と繰り返してきた。しかし、現実に目を向けると、北朝鮮は米国に脅威となるICBM(大陸間弾道ミサイル)を廃棄しても、日本を射程に収める中短距離ミサイルは保持し続けるだろう。日本にとって核の脅威は米国よりも深刻だ。何よりも、拉致問題は日本が北朝鮮との話し合いで解決しなければならない。日米の利害が異なる中で、日本は独自の対北朝鮮外交を模索する必要がある。「100%共に」とはいかない場面も出てくるのだ。

北朝鮮は韓国との融和、米国との国交正常化を進めても、最終的に経済再建を果たすには日本からの経済協力が不可欠である。そのためには拉致問題を解決して、国交を正常化しない限り、日本からの巨額資金は流れない。それは金委員長も認識しているに違いない。安倍首相が、そうした先を見据えて、多面的、重層的な対北朝鮮外交ができるのかどうか。まさに、その力量が問われている。

星 浩 政治ジャーナリスト

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ほし ひろし / Hiroshi Hoshi

1955年生まれ。東京大学教養学部卒業。朝日新聞社入社。ワシントン特派員、政治部デスクを経て政治担当編集委員、東京大学特任教授、朝日新聞オピニオン編集長・論説主幹代理。2013年4月から朝日新聞特別編集委員。2016年3月からフリー。同年3月28日からTBS系の報道番組「NEWS23」のメインキャスター・コメンテーターを務める。著書多数。『官房長官 側近の政治学』(朝日選書、2014年)、『絶対に知っておくべき日本と日本人の10大問題』(三笠書房、2011年)、『安倍政権の日本』(朝日新書、2006年)など。

 

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