日本は独自の対北朝鮮外交を模索するべきだ 安倍首相は「100%米国と共に」と言うが…

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トランプ氏の会見で日本政府を安堵させたのが、「金氏に拉致問題を提起した」という発言だった。これを受けて、安倍首相は拉致問題などの解決に向けて、日朝首脳会談の日程調整を進めるよう、外交当局に指示した。
とはいえ、日朝の関係改善にはハードルが多い。

今回の米朝会談でも、金委員長から日本との関係改善に積極的な発言があったことは、確認されていない。「北朝鮮にとっては、米国との関係が最優先。いまは米朝関係が良好になっているので、日本との関係は後回しだろう」と日本政府高官は話す。

米朝関係が悪くなれば、北朝鮮は日本に関心を示す

この高官によると、日米朝の間には「一種の法則」があるという。北朝鮮は米国との関係が良いときは日本に関心を示さず、逆に、米国との関係が悪化すると、途端に日本に関心を示すというのだ。

その具体例が2002年にあった。この年の1月、当時のジョージ・W・ブッシュ米大統領が連邦議会での一般教書演説で、北朝鮮をイラク、イランなどと並んで「悪の枢軸」と断定。米朝関係は緊張した。そこに目をつけたのが、当時、外務省アジア大洋州局長だった田中均氏だ。

小泉純一郎首相や福田康夫官房長官らに北朝鮮との関係改善の必要性を説いた。田中氏は、首相官邸をしばしば訪れ、新聞の首相動静欄に「田中局長」の名が掲載される。それを北朝鮮側に示して「小泉首相から特別に信頼されている」ことをアピールした。

同年9月、小泉首相の電撃訪朝が実現。金正日(キム・ジョンイル)総書記との間で、国交を正常化させるとした日朝平壌宣言の合意にこぎつけ、一部の拉致被害者の帰国につながった。

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