鳶職から転身したITベンチャー社長の生き様

失敗は当たり前、未熟だから乗り越えられた

建設業界は市場規模51兆円と、国内で最も大きい産業の一つだ。だが、受発注は前述のように人脈頼みが中心。隣の町で工事案件があっても、知り合いでなければ工事需要があることすら把握できない。

またピラミッド構造の中で下請けの立場は弱く、長い支払いサイトや不払いに泣くことも多い。もちろん労働環境も厳しいから、若い働き手の定着率が低い。内山さんはこういう事情を創業メンバーに折々説明し、「優秀な職人や会社が、正当な条件で受注できるようにしよう。社会に不可欠な建設業を、もっと魅力ある業界に、優秀な人が働き続けられる業界にしよう」と思いを一つにした。

「口コミ」の強い業界だからこそ広がった

営業活動では、そもそもパソコンすらないという建設会社に対して、パソコン購入から設定まで無償で引き受けるなどして、地道に登録企業を集めた。ある程度に達すると、「口コミ」の強い業界だけに、登録件数が着実に増え始めた。

内山達雄さんは神奈川県内の中高一貫校を経て、地元の中堅私立大学に進学。大学中退後、鳶として働いた。その経験が起業につながった(撮影:尾形文繁)

株式公開も数年後のスパンで視野に入り、さまざまな投資家や金融機関が会社を訪ねてくるようになった。鳶職人として社会に出てから22年。普通であれば、挑戦をあきらめてしまってもおかしくない年月だ。もっと楽に、ここまでたどり着きたかったとは思わないか?と記者が尋ねると、内山さんはこう答えた。

「何事もなく大学を卒業し、大企業に就職できていたら、自分のダメなところを受け入れられない人間になっていたと思う。大学を中退して、鳶というまったく目指していなかった仕事に就いたとき、自分が人生のレールから完全に外れた感じがしました。だからその後は、『できないのが当たり前、失敗するのが当たり前』と考え、何かがうまくいかないときは、自分が未熟だったと考えて乗り切ることができるようになりました。何より、こういう人生を歩んだことは誰のせいでもなく、すべて自分で決めたこと。何かを恨むどころか、毎日本当に楽しいと思って生きています」

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