あなたの仕事と給料が「AI」に奪い取られる日 生産性が上がっても給料が上がらない理由

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過去20年間でわれわれビジネスパーソンがいちばん実感しているであろうことは「パワードスーツ効果」である。パワードスーツとはハリウッド映画のヒーローが着る強化服のことだ。パワードスーツを身につけると普通の人がスーパーヒーローの力を手に入れる。

現代社会のパワードスーツとはインターネットでありパソコンでありスマホである。これらのパワードスーツを手にすることで、現代のビジネスパーソンは、これまでになかったほどの高い生産性で働くことができるようになった。

あなたも心当たりがあるだろう。スマホの普及によって仕事は忙しくなる一方だ。どこにいてもメールやSNSで仕事は追いかけてくる。そしてどこにいてもインターネットや社内のサーバーにアクセスすれば仕事に必要な情報は手に入り、一つひとつの用件はその場で処理できる。しかしそのような仕事が無限に追いかけてくるようになった。

仕事の生産性がここまで高くなったのにもかかわらず、給与は下がり続ける一方だ。2000年頃の日本人の実質賃金を100とすれば、実質賃金は過去一貫して下がり続け、現在では85ぐらいの水準にまで下がってきた。生産性が高くなったのに給料が下がる理由は、パワードスーツを使っているのはあなただけではなく、世の中全員だからだ。全員が同時に生産性を上げたので、仕事は忙しくなる一方で給料は上がらなくなってきた。

これから先、人間の仕事を肩代わりする人工知能の能力が向上するに従って、さらに生産性は上がり、さらに給料は下がっていくだろう。これがパワードスーツ効果の恐怖である。

AI失業の脅威は政治で抑え込まれる

AI失業が本格的に社会問題になり始めるのは今から4年後の2022年だ。自動車メーカー各社から「レベル5」に位置付けられる(レベル0~5までの6段階ある)完全な自動運転車が発売されることで、日本国内の123万人の職業ドライバーが将来的な失業の危機の入り口に立つ。

運送会社から見れば人間が運転する長距離トラックと比べて自動運転の長距離トラックはそのコストの低さからとても魅力的な商品である。路線バスやタクシーなど、人を乗せて市内を走るビジネス車両も人件費なしで運用できるようになる。

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