あなたの仕事と給料が「AI」に奪い取られる日 生産性が上がっても給料が上がらない理由
ではドライバーの仕事が消滅するとドライバーは大量失業するのだろうか。ここが問題である。100万人規模の失業が一度に起きてしまうとリーマンショックと同じ規模の大きな社会問題になる。時の政権はもたなくなるだろう。しかし政府には比較的簡単な対策がある。ビジネスで利用する自動車には必ず管理士をひとり搭乗させなければいけないという法律を作ればいいのだ。
これで運転は自動化されても、運転席には人が乗る必要が出てくる。このような政府の規制によって仕事が消滅してもAI失業は抑制される。もちろん車に乗りながらスマホをいじっていればいいだけの仕事だから、給料はプロのドライバーほどは高くない。
専門家の仕事はなくならないが給料は大幅に下がるはず
弁護士や会計士、医者といった高級取りのナレッジワーカーの仕事は比較的近い未来に人工知能におきかわることができると言われている。専門家の仕事は現在のタイプの人工知能に向いているのだ。
とはいえこれらの士業の仕事も同様に、人工知能に置き換えられた後も「資格をもった人間が行わなければならない」という法律は残るだろう。スマホをいじっているだけで患者の診断ができるようになっても、その診断結果を読み上げるのは医師免許を持った開業医。そんな時代がもうすぐやってくる。これらの仕事は法律によって消滅しないとしても、誰でもこなせるようになる専門家の給料水準は今よりも大幅に引き下がっていくだろう。
法律で仕事消滅から守られる仕事ばかりではない。メガバンクではすでに人工知能によって無駄な業務を消滅させる試みが進んでいる。RPA(ロボティックプロセスオートメーション)と呼ばれるその手法によって、ホワイトカラーの事務作業の多くが人工知能に受け渡されることになる。
事務作業はいちばん人工知能に向いた仕事である。毎日空調の効いた快適なオフィスの中で机に向かって行うような仕事の大半は、これから5年、10年で大幅に人工知能に置き換わるようになる。
これから先の5年から10年の間、人工知能によって奪われない仕事とはいったい何だろうか? 拙著『「AI失業」前夜――これから5年、職場で起きること』では3つの可能性を挙げている。人工知能の発展そのものにかかわる仕事。人工知能が苦手なコミュニケーション力に磨きをかける仕事。そして、頭脳だけでなく肉体も同時に働かせるフィールドワークの仕事である。
完全なAI失業はまだ10年以内には起きないかもしれない。しかしAI失業前夜には、人工知能の発達によってこれまでにないほど仕事の中身が代わり、支払われる給料も激変する。変化はやはり起きるのだ。
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