やり方はこうです――。人通りが多い場所、B君の場合は有楽町マリオンが主戦場でした。そこでまず、「結構タイプです。連絡ください……」と、名刺に書き込みをして、それを4つ折りにします。
すごい美人を見つけたら、そっと背後から忍び寄り、4つ折りにした名刺をカバンや買い物袋に黙って投げ込むのです。これを数十人の女性にします。すると1〜2人の美人からメールが来るという寸法です。
当時のB君はまだまだ若く、いわゆるやんちゃ盛り。一時期、これにどっぷりハマってしまいました。B君いわく「ハラハラ・ドキドキ感がたまらない……」そうです。
名刺を投げ入れる瞬間はスリリングだし、何十人もの女性に対して名刺を投げ入れているので、会う瞬間まで、どの美人が待ち合わせ場所に来るかわからない。だから「ハラハラ・ドキドキ」なのだそうです。
そう私に語ったB君は数カ月後、さらにスリリングな出来事に遭遇します。勤務する会社の人事部に呼び出されて、厳重な注意勧告をくらったのです。きっと、名刺を投げ入れらた女性が、B君にではなく会社に通報したのでしょう。
もともと、B君がこれを始めたきっかけは、偶然の出来事からでした。地下鉄の車内で見かけた女性に一目ぼれ。しかし周囲の目があるので声をかけられず、必死の思いの中でやってしまったこと。いわゆる「出来心」というヤツですね。
これがたまたま成功して、それに味をしめて悪乗りして、水平展開したのが運のツキ。それ相応の報いを受けたということです。しかし、B君……、僕は友人として君にお礼をいいたい。君のおバカな行為が多くの読者さんに何らかの教訓を残したはずだ。ありがとう、B君。
人は「寂しさ」ゆえに恋をする
教訓といえば、この話から恋愛に関する原理原則がみえてきます。それは恋する心理に関すること。人はなぜ恋を求めるのかということです。
B君いわく、このやり方で連絡をしてくる女性に共通するのは、現状に何らかの不満やむなしさを感じているそうです。たとえば、彼氏との関係が冷えきっている、仕事場になじめない、疎外感を味わっている……などなど。それがゆえに、異性を求める求心力がとてつもなく強くなっていると言うのです。
この心理状態をもっとわかりやすくいうと、「寂しさ」という超不安定な心理です。
この不安定さを解消しよう、何とか安定させよう、とすればするほど、何かにすがりたくなります。それが買い物依存であったり、ドカ食いであったり、アルコールであったり、異性であるわけです。
「人は寂しさを解消させようとして恋をする」――これ、真理と思うのは私だけでしょうか。
もし、寂しさという種から芽が吹いたら、根気強く大地に根をはわせ、葉を茂らせ、豊かな実を結ばせるのか……。それとも芽を摘むことを繰り返すのか。この選択が「聖なる夜」の過ごし方を、いえ、その後の人生のあり方を大きく左右することでしょう。
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