米朝首脳会談の舞台で警戒されるテロの脅威 世界一安全なシンガポールも危機感強める

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シンガポールの街中を歩くと銃を携え警備に当たる警察官を多く見掛ける。昨今、政府はテロ対策への危機感をあらわにし、警備を強化している(筆者撮影、昨年11月)

本日6月12日に開かれる史上初の米朝首脳会談の舞台に選ばれた、シンガポール。国家としての中立性や北朝鮮からの飛行距離などのほか、警備・保安面における強固な基盤が、南北軍事境界線のある板門店やスイス・ジュネーブなどの選択肢を蹴って会談場所に決定した背景にある。

シンガポールはこれまで各国トップ級の国際会議を多数アレンジしてきた実績を持つ。2015年の歴史的な中台首脳会談をはじめ、毎年アジア最大規模の安全保障フォーラムである「アジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)」がシャングリラ・ホテルで開かれるなど、警備や安全保障、治安の面で非常に高く評価されている。

シンガポールのテロ脅威指数は世界最後尾

国際的な調査機関がテロの脅威指数を示した世界各国のランキングでは、シンガポールはほぼ例年、最後尾をキープしている。2017年も130位だ。アメリカの9.11同時多発テロ事件以降、テロ関連の攻撃を一度も受けていないことなどから、世界で最もテロの影響を受けにくい国家とされているのだ。

しかし、実は政府が昨今、異例の警戒態勢を敷き始めていることは、日本でほとんど報じられていない。

シンガポール政府は去年6月、テロ攻撃の脅威が「近年で最高レベルに達している」とする報告書(Singapore Terrorism Threat Assessment Report 2017)を初めて発表した。報告書では、東南アジアの金融・経済の中心地として、多くの多国籍企業が集積するハブとしての機能も果たすシンガポールが、「過激派組織『イスラム国(IS)』の攻撃対象に入っている」と指摘。ISを含む過激派組織のオンライン出版物の中で、「国際経済を襲うことで西側諸国に打撃を与える」ことを目的とした攻撃対象に、シンガポール国内の2カ所が挙げられていたことを明らかにした。

また、テロの脅威が「アルカイダ」や東南アジアのテロ組織「ジェマ・イスラミア(JI)」を支持する集団から、最近はISのプロパガンダから影響を受けた”個人”へと移り、過激化した一般の市民によるテロ攻撃や自爆テロの危険性が増している点についても同報告書は触れている。内務省は今、シンガポールへのテロの脅威は非常に深刻だとし、政府だけでなく一般市民一人ひとりが警戒感を持ってテロ対策に協力することが求められていると、危機感をあらわにしている。

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