株価が暴落した時、投資信託はどうなるのか 「売る時」のことを最初から考えておくべき
言うまでもなく、電話の内容の多くは不安と苦情が入り混じったものでした。ところが自分の資産評価額が目減りしてしまったことへのクレームというのは、ほとんどありませんでした。どんな内容の苦情だったかと言うと、投資信託の売買(約定)の「値段」と「タイミング」に関するものが圧倒的に多かったのです。
「午前中にあんなに下がったのだから今すぐ売りたい!」、あるいは「この値段になったら売りたいので、指値で売りたい!」といった類の問い合わせが多かったのです。個人投資家は、おそらく不安心理から電話してきたのでしょう。ところがそれに対して「そういうことはできません」と言うと、「え! どうしてできないの?」という「お叱りの声、声、声」です。これはひとことで言えば、投資信託の仕組みを理解していないことから起こることなのです。
投資信託と株式では売買の仕組みが異なる
多くの方にとって「投資」といえば「株式」のことが頭に浮かびます。「株式」であれば、今、いくらで「売りたい」、「買いたい」と注文を出せます。そして、売る場合は、安い値段で指定した注文から売れていく(買う場合は逆)という「価格優先」、先に出した注文が優先される「時間優先」のルールによって売買は成立します。
ところが投資信託の場合はその売買のやり方がまったく異なります。そもそも新聞やネットで表示されている投資信託の価格というのは前日(正確には前営業日)の基準価額です。前日の取引終了後、終値に基づいて投資信託の財産が評価され、それを口数で割った1万口当たりの価格が基準価格です。つまり、昨日の値段なのです。
多くの方の売買注文を公正に処理するには、取引をいったんストップして精算する必要があります。投資信託の価格を算出するために証券取引所での株式の取引をストップするわけにはいきませんから、どうしてもその日の取引が終了した後でないと価格は算出されません(ETF=上場投資信託のような例外はあります)。
つまり、注文を出す段階ではいくらの価格で売れるかがまったくわからないのです。さらに海外に投資している場合には、翌営業日の朝の為替レートで資産が評価されるので、値段がつくのも翌日となりますから、売ってから、売った価格を知るまでに1日以上かかるということになります。
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