株価が暴落した時、投資信託はどうなるのか 「売る時」のことを最初から考えておくべき

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投資信託を売却するというのは自らが市場に直接売り注文を出すわけではなく、金融機関に対して自分が持っている投資信託の一部または全部解約を指示するということなのです。

前述のように買う値段、売る値段が決まるのが約定の翌日または翌々日ということですから、それがわからない状態で注文を出すということになります。理解している人には当たり前でも、知らない人には「どうして今日売りたいのに売れないのだ! どうしてくれるんだ!」と怒りたくなるかもしれません。いわんや、リーマンショック時のようなある種パニック的な売りが集中したときであれば、初めて売買する人は、本当にヤキモキしたことでしょう。

電話での注文や発注画面でこのことに気づいて、苦情を言ってこられた方には、その時点で丁寧に説明することで、ある程度納得してもらうことができました。

暴落は突然やってくる

問題は、「とにかく売ってくれ」と言ってきた人です。売ってしまった後にその結果を見て再度びっくりし、「なんで、こんなことに」「こんなつもりじゃなかった」と「不満」をもらしていました。こうしたご連絡をいただいた方々に対しては、淡々と仕組みを説明するほかありませんでした。

確定拠出年金の場合は、会社が退職金制度として導入したので、「よくわからないけどはじめて投資信託を買ってみた」という人たちが大半でしょうから、こういうことが起こったのかもしれません。しかし、最近始まった「NISA」(少額投資非課税制度)やつみたてNISAをやっている人の中にもひょっとしたら、投資信託の売買の根本的な仕組みをよく知らない人が結構いるかもしれません。

すでに企業型確定拠出年金の加入者は650万人(2018年4月末時点)とサラリーマンの6人に1人が利用している制度となり、つみたてNISAで投資信託デビューしている若い人も増えているようです。

この数年はアベノミクスの影響で紆余曲折はあっても、株価は比較的順調に上昇してきました。しかし、いつの時代でも暴落は突然やってくることが多いものです。そんなとき慌てないようにするためにも「投資信託はそれぞれの投資家の持ち分であり、価格の算出は1日1回、売るのも買うのもその価格で1日1回」 ということは、あらかじめぜひ知っておいたほうが良いと思います。

大江 加代 確定拠出年金アナリスト

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おおえ かよ / Kayo Oe

大手証券会社に22年勤務、サラリーマンの資産形成にかかわる仕事に一貫して従事。退社後、夫の経済コラムニストである大江英樹氏(株式会社 オフィス・リベルタス 代表)を妻として支える一方、確定拠出年金の専門家としてNPO確定拠出年金教育協会 理事、企業年金連合会 調査役として活動。野菜ソムリエの資格も持つ。

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