死因4位「脳卒中」治療の深刻すぎる地域格差 住む地域によって助かる可能性に大差がある

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東京都を例に見ていこう。

厚生労働省が2008〜12年の5年間に亡くなった人の死因を年齢調整した死亡率(標準化死亡比)をみると、東京都内に住む男性における脳卒中(脳血管疾患)の死亡率には5.5倍もの地域差があった。死亡率が最も低かったのは小金井市、最も高かったのは奥多摩町だった。女性でも3倍以上の地域差があり、目黒区が最も低く、奥多摩町が最も高かった。

端的に言えば、脳卒中のリスクを抱える男性は小金井市に、女性は目黒区に住むのが都内では最善の選択ということになる。

バラバラに行われている脳卒中対策

t-PA静注療法を実施している病院であっても、24時間体制ではない場合がある。中には、t-PA静注療法に対応できると謳っておきながら、症状が出た患者が運ばれても適切に行っていない悪質な病院もあるという。

こうした現状を鑑み、全国どこでも同じ水準の脳卒中治療を受けられるよう、がん対策基本法と同じように「脳卒中対策基本法」の成立を目指す動きがある。

「脳卒中・循環器病対策基本法の成立を求める会」で代表を務める山口武典医師(国立循環器病研究センター名誉総長)は、ブツ切れ状態にある現在の脳卒中対策を変える必要があると断言する。

脳卒中対策は現在、バラバラに行われ、一連の流れがトータルに考えられていない。

予防は「健康日本21」や特定健診・特定保健指導が中心。救急搬送は改正消防法が規定する救急搬送及び受け入れの実施に関するルール(実施基準)に準拠。急性期から維持期の医療は「医療計画の5疾病5事業の一つ」に規定され、介護は介護保険などに基づいて進められている。

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