死因4位「脳卒中」治療の深刻すぎる地域格差 住む地域によって助かる可能性に大差がある

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いま、自宅で家族が脳梗塞になったとして、どのようなことが考えられるか。

現在、t-PA静注療法で改善が認められない場合や、t-PA静注療法の適応がない脳梗塞には、発症から8時間以内であれば「血管内治療」という選択肢がある。

足の付け根から細いカテーテルを動脈に入れて脳まで通し、詰まった血栓を取り除く。デバイスと技術の進化ととともに再び血流が戻る確率は上昇している。しかし、この治療も開始が遅れるほど効果が下がり、治療を行える専門医の数は限られている。

仮に脳梗塞の兆候に気付きすぐに救急隊を呼び、速やかに病院に運ばれたとしても、t-PA静注療法が速やかに行われるかは病院次第になる。t-PA静注療法が有効ではない場合、その病院で血管内治療が受けられるかどうかもわからない。

そんなことはおかまいなしに、受け入れてくれる病院にただ運ばれていくだけである。

現状は自衛あるのみ

運ばれる病院により患者の命が左右され、障害が残る可能性も大きく変わる。それにもかかわらず、救急搬送時点で病院の実力を考慮しているのはごく一部の地域にすぎない。

今のところ、血管内治療が受けられる病院リストすら存在していない。こうしたリストを国が作成して一般公開すれば、国民の意識も変わるに違いない。

このように、脳卒中を巡る治療環境はまだまだ頼りない。

t-PA静注療法の実施率が1%上がれば、リハビリや介護施設にかかるコストだけでも年間約7.8億円の医療費節減につながると推定されている。

基本法が成立して全国どこでも同じ水準で治療を受けられれば、脳梗塞を起こしても元気で戻れる人が増え、貴重な人的資源が失われずに済む。

しかも、患者の入院が長引いたり、治療薬を減らしたりすることもなく、医療費は節減できる。そう山口医師らは考えている。

いくら最新治療が保険適応されても、10年以上経過してなお標準的に受けられないのでは意味がない。それまではもっぱら自衛あるのみである。

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