残されたパラグアイ戦をテストに使う功罪 「8年前よりも深刻」な日本代表に求める覚悟

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パラグアイ戦の扱いを指揮官は「バックアップメンバーの底上げ」と捉えているが、確かにそれも重要かもしれない。スイス戦で途中出場した乾貴士(スペイン1部・エイバル)や酒井宏樹(フランス1部・マルセイユ)、香川真司(ドイツ1部・ドルトムント)らがチームを多少なりとも活性化させたように、コロンビア戦までの10日間に調子を上げてくる選手もいるはずだ。そういう選手に期待したくなるのも分かる。

ただ、全員にチャンスを与えていては、短時間でチームを固める作業に支障が出る。スイス戦で出場時間が少なかった選手をスタメンに抜擢するのはいいが、チームをガラリと変えて戦うことは絶対に回避してほしい。

8年前の経験値を生かさなければもったいない

8年前の岡田ジャパンは、パラグアイ戦に相当する本番前最後のテストマッチ・コートジボワール戦(スイス・シオン・0-2で黒星)を45分×3本のイレギュラーな試合形式にして、出場時間の少なかった松井大輔(J2・横浜FC)やサポートメンバーの永井謙佑(J1・FC東京)を3本目に出した。

そこで一気に調子を上げた松井が本番スタメンに滑り込んだのだから、そういった配慮が奏功したことになる。加えて言うと、ベースキャンプ地・ジョージに入った直後にジンバブエとの練習試合を実施。そこで初めて本田の1トップにトライしている。それくらい実戦の場を作る努力をするのであれば、ここまで控えに甘んじていた選手もゲーム感覚を取り戻せる。日本代表の過去の英知を結集するのであれば、そういった配慮も必要だろう。

「南アの時と状況が似ていると思われるかもしれませんが、実際、自分の中では何の保険にもならないので、今やってることを突き詰めたいです」と長谷部は改めて強調したが、自身の成功体験からフィードバックできることを積極的にやった方が得策ではないか。

南アと比べるのを良しとしない選手も多いが、オールジャパンでのぞんだ唯一の16強入りの経験値を生かさなければもったいない。西野監督もコーチングスタッフにはそのあたりを今一度、強く認識してほしい。そしてロシアで勝つという強い覚悟を求めたい。

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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