残されたパラグアイ戦をテストに使う功罪 「8年前よりも深刻」な日本代表に求める覚悟
この試合から日本は4-2-3-1を改め、阿部勇樹(J1・浦和レッズ)をアンカー(中盤の底で守備のウェイトの大きさを明確にしたポジション)に据えた4-3-3へ布陣変更。自陣に引いて守ることを第一テーマにするという大胆な割り切りを見せた。
結果的には闘莉王の先制点でリードしながら、闘莉王と中澤佑二(J1・横浜F・マリノス)の両センターバックが絡んで2つのオウンゴールを献上。惜しくも1-2で逆転負けを喫したが、守備自体は格段によくなり、本番で見せた堅守へとつながっていったのである。
このイングランドを今回の日本代表に当てはめると、スイス戦に該当する。スイス戦でロシアへの道筋が見えれば、まだサプライズを起こせる可能性はあった。日本は4-2-3-1で戦い、前半は大迫勇也(ドイツ1部・ケルン)と本田圭佑(メキシコ・パチューカ)を中心としたハイプレスがある程度は機能し、相手右MFシャキリ(イングランド1部・ストーク)と左MFエンボロ(ドイツ1部・シャルケ)の両アタッカーには複数の選手がマークに行ってスピードと技術を封じていた。それが90分間通して実践でき、可能な限り長く無失点で乗り切れていたら、大きな手ごたえをつかめただろう。
しかし、やられてはいけないサイドアタックから吉田麻也(イングランド1部・サウサンプトン)がPKを献上。前半のうちに1点をリードされ、後半残り10分を切ったタイミングで自らのコーナーキックからの逆襲をセフェロビッチ(ポルトガル1部・ベンフィカ)に決められるというのは、回避しなければならないシナリオだった。
今の日本代表には粘り強い守備が必要
「1-0の場合、最後のロスタイムまで相手はムチャクチャ緊張する。でも2-0になったら何気ないセンタリングでも平気で跳ね返せたりする。向こうのミスを誘えない状況なんで、1-0でラストミニッツまで行きたいのはありますね」と本田も悔しさをにじませたが、そういう粘り強い守備をする術を見出さない限り、本当にロシアで3連敗もあり得る。それを学習したのが、スイス戦の唯一の収穫だったかもしれない。
とにかく、同じミスを繰り返さないためにも、ここから先は基本布陣を4-2-3-1に絞ってチーム完成度向上に徹することを強く求めたい。酒井高徳(ドイツ1部・ハンブルガーSV)がエンボロに突破された1失点目のケースは本番ではあり得るのだから、あの時間帯は自陣に引いてブロックを作るという割り切りがあってもよかったはず。
ちょうど大迫が負傷退場し、武藤嘉紀(ドイツ1部・マインツ)が入ったばかりの時間帯で意思統一が欠けていたのは確かだが、そういう時こそ「いったん引いて守る」というのを1つの約束事にすればいい。8年前の日本代表には「自陣に引いて8人で守り、前線3人で攻めに行く」という立ち返れる原点があった。そういうものを作れなかったスイス戦は悔やまれるが、まだ修正できる可能性がゼロになったわけではない。ここからの西野監督のマネージメントが大いに問われてくるのだ。
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