グーグル成長の立役者「アンドロイド」の功罪 スマホOS10周年、巨大モバイル覇権に異議も

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グーグル側は、アンドロイドスマホにグーグルアプリを入れなければならない規定はないと主張。確かにメーカー側は必ずしも協定に同意する必要はない。だがグーグルプレイを入れられなければ、提供アプリ数が少ないほかのアプリストアを使うことになる。

一連の契約を分析した米ハーバード大学のベンジャミン・エデルマン准教授は自身の論文で、結果的にメーカーはグーグルと協定を結ばざるをえなくなり、検索やマップなどの競合アプリがグーグルと平等に競争できなくなったと指摘した。

欧州で巨額制裁の可能性

欧州委は7月にもアンドロイドの競争法違反を認定し、制裁決定するとの観測もある。制裁金は年間売上高の10%が上限で、グーグルの場合、最大110億ドル(約1.2兆円)規模となる可能性がある。同社は昨年、買い物検索で競争法違反があったとして、単独企業では過去最高となる24.2億ユーロ(約3100億円)の制裁金が科された。

欧州委員会で競争政策を担当するマルグレーテ・ベステアー委員は、グーグルの調査における強硬な姿勢で知られている(写真:©European Commission)

それだけではない。二人の米国上院議員は、アンドロイドのデータプライバシーに注目。位置情報送信に関して実質的に同意を強制していないか、位置情報の活用方法についての説明が不十分ではないか、などと提起した。議員らは5月初め、米国の独禁法当局である連邦取引委員会に調査を依頼する書簡を送った。

プライバシー問題に詳しい米ノースイースタン大学のクリスト・ウィルソン助教は、「アンドロイドは位置情報に基づく行動履歴やアプリの使用履歴などの個人情報を収集している。設定や収集状況を確認できる場所は設定ページの奥深くにあり、わかりにくい。そうした情報をユーザーへ定期的に通知するような仕組みも必要だ」と指摘。グーグル側は、収集された個人情報を確認・削除できるサイトを用意するなどして、透明性や個人がデータ管理できる環境を確保しているとする。

「消費者は無料サービスを使うために、その対価としてデータを提供していること、データを扱う企業はこのビジネスモデルが信頼なしには成り立たないことを自覚しなければならない」。米調査会社ガートナーのピーター・ソンダーガード上級副社長はそう忠告する。アンドロイドの次の10年で、グーグルは難しい舵取りを迫られそうだ。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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