25歳女性が「最下層」から抜け出せない理由 カラダを売っても続く貧困の深刻

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ネガティブな理由が複合的に絡み合わないと、若い20代の女の子がすべてをあきらめて、福祉に頼るしか希望がないという状態には陥らない。彼女は典型的な“子どもの貧困”の当事者であり、その被害者だった。やはり23歳まで過ごした東北の家庭や生活環境に問題があった。

現在、日本の子どもの相対的貧困率は13.9パーセント(2016年厚生労働省国民生活基礎調査)に上り、必要最低限の生活水準が満たされていない子どもが7人に1人もいる。教育と収入は直結する。家族の格差が子どもの格差にそのまま反映される時代になってしまった。

どんな家庭だったのか聞いていく。父子家庭に育ち、ネグレクト状態で祖母に育てられた。父親は彼女が幼少の頃に脳梗塞で倒れ、障害者認定を受ける。祖母のいる実家に父子で暮らし、障害年金と賃金の低い仕事の報酬が世帯収入だった。祖母と父子は別世帯だったので、世帯年収はおそらく150万円未満だ。

母親は父親が倒れた時期に不倫して、病み上がりの父親と幼かった娘を捨てた。母親の記憶はまったくなく、顔も名前も知らない。母親代わりになった祖母は「お前の母親は淫乱女」みたいな暴言を延々と言い続けたという。劣悪な環境で育っている。

「勉強は小学校までは普通にできたけど、中学校から英語がまったく覚えられなかった。おカネがないから塾とか考えられなかったし、おばあちゃんがとにかく厳しかった。勉強しろって木の棒でたたかれ続けました。バカで無能なお前は、あの女みたいになりたいのか!って。私を棒でたたきながら、いつも母親のことをののしる。私は母親のことなんて、なにも知らない。精神的な限界を超えちゃいました」

不眠がはじまって登校する意欲がなくなった。中学2年生の1学期に不登校になって、部屋に引きこもった。

おカネが払えなくて高校を辞めた

「最終的におばあちゃんに殺意みたいなのが芽生えて、キレました。部屋に鍵かけて不登校になって、暴れて壁を壊した。家族とは誰ともしゃべらなかったし、なにも聞かなかった。おばあちゃんとはお互いを見捨てたというか、一切関係ないみたいな感じになった」

ほとんど登校しないまま卒業した。定時制高校に進学した。高校へは通ったが、中学校で勉強をまともにしていないので授業にはついていけなかった。

「今思えば、こんなことになったのは、高校を辞めたことがいちばん大きかった。1年生が終わるとき、お父さんが高校に必要なおカネを払ってくれなかった。公立だったので微々たる金額で、確か1万5000円くらい。『うちにそんなカネはない、自分で仕事して払え!』って怒鳴られた。アルバイトはしていたけど、自分で払うのは嫌だった。そのまま辞めちゃいました」

父親はわずかな納入金の負担を拒絶、原田さんも払いたくなくて高校中退した。父親に退学を伝えると、興味なさそうに「あ、そう」とうなずかれただけだった。

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