レクサス「ES」はカムリと一体何が違うのか 今秋、最新技術投入の7代目が日本に初上陸

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快適性は足の動きのスムーズさや段差を乗り越える際の衝撃吸収のいなし方、そしてストローク感を生かした乗り味は、語弊を恐れずに言えばLSよりも優れていると感じる部分もあるが、荒れた路面でのザラザラと感じる振動はちょっと気になった。コンベンショナルなダンパーとしてはかなりのレベルにきていると思うが、より高みを目指すのであればAVSだろう。

ステアリング(筆者撮影)

Fスポーツは標準車よりもステアリングはダイレクト感が引き上げられ、サスペンションはストロークを抑え引き締められたセットアップとなり、走りの良さを明確にアピールした乗り味だ。GS/ISのFスポーツがダルく感じてしまうくらい精緻なハンドリングと硬めだがカドがないすっきりした乗り心地のバランスだ。ただ、スポーティと言っても突出した物ではなく標準車の45度線上にシッカリと位置しており、ESの世界観から外れてはいないのはマルだ。

ちなみにドライブモードでエンジン制御やEPS制御、サスペンションの味付けなどが変化するが、これはレクサス全般に言えることだが、モードが多すぎなのとモード毎の変化が少ないのが残念な部分だ。

歴代ESのDNAの一つである静粛性は風洞実験による車体形状の検証や吸音材、遮音材の最適配置はもちろん、ノイズリダクションホイール(標準車)や遮音性の高いアコースティックガラスの採用など、LS開発で培った技術をフィードバックするなど、今まで以上に徹底してこだわっているが、その効果は会話明瞭度を含めて非常に高いレベルだ。シンプルなシステムながらもLS並みの音場を実現する「マークレビンソン・ピュアプレイ」も心地よい音を聞かせてくれた。

しかし、その一方でアクセルペダルの戻し音やバッテリー冷却ファンの音など、今まで気にならなかった音が気になってしまった。また、逆にドアの開閉音のように音が発生する部分はもっと音質にもこだわってほしい。確かに機能的には問題ないかもしれないが、そんな細かい部分まで注力するとクルマの印象はもっとよくなる。これらは年次改良でもいいので何とか改善を期待したいところである。

乗れば乗るほど良さがにじみ出てくる1台

今回、新型ESに乗って思ったのは、“インパクト”という意味ではLS/LCにはかなわないが、LS/LCにはない“やさしさ”が備わっているのと、乗れば乗るほどにジワっと良さがにじみ出てくる1台であることだ。ただ、全体的にちょっといい人過ぎるかな……と思う部分もある。

プレミアムブランドはクルマの良し悪しに加えて個性やメッセージ性も重要だ。これは筆者のアイデアにすぎないが、たとえばファーストエディションとして「Fスポーツ+V6-3.5L」の仕様を限定で出すなど、「新型ESは高級カムリではない」ということを、日本のユーザーにアピールするようなプラスαも必要だと思う。

山本 シンヤ 自動車研究家

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やまもと しんや / Shinya Yamamoto

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車雑誌の世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の気持ちを“わかりやすく上手”に伝えることをモットーに「自動車研究家」を名乗って活動をしている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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