結婚21年、42歳で離婚した女の自由と自立 紙切れ1枚なのにそれに縛られるからつらい

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そのため、排せつ行為のような性生活に寂しさだけが募る日々が続いた。女性としての喜びのかけらも感じたことはなかった。それでも、女として、満たされない思いだけは募っていた。しかし、運悪く数カ月ぶりの性交渉で、4人目の子を妊娠してしまった。

「子供を産みたくなくて、お腹をボカボカ叩きました。流産しないだろうかって。この人との縁をつなぐようなものはいっさい欲しくなかったんです。上の男の子たちも大きくなっていたし、やっとこの子たちが離れるのに、それ以上この男とつながりを持たなきゃいけない何かが生まれるのがすごく嫌だった。経済的に自立してなかったから、頭を下げてこれから生まれてくる子のために、お父さんに、かしずいていかなきゃいけないんだと思うと、嫌で嫌でしょうがなかったんです。だけど、いざできちゃうと、中絶はできないんですよね」

百合子さんは、毎日が無性に寂しくて、たまらなかった。4人目の子供が生まれてからは、夫とは完全にセックスレスとなった。

「なんで、私、こんな生活しなきゃいけないんだろう」

百合子さんは次第にそう考えるようになっていった。啓介からは生活費として、月に8万円を貰っていたが、百合子さんが衣類など、自分のものを買うと怒りだす。スカート1枚も買えずに、美容院に行くこともできなかった。髪の毛は荒れ放題で、服は首の伸びたTシャツをいつも着ていた。友達にランチを誘われても、あまりのみすぼらしさに恥ずかしくて断る日々が続いた。

小さい穴が、どんどん大きくなっていく感じ――。百合子さんは、そう例える。そして、その穴はもはや塞げないくらいに広がり、修復のしようもなかった。精神的にも肉体的に限界が近づいていた。

「周りの世界がチラチラ見え始めてきて、『あれ、おかしいな』と思うようになったんです。周りのママ友なんて、当然ながらファミレス禁止令なんかない。好きな洋服を買って、ランチもしている。うちの事情を話したら、笑って馬鹿にされました。“私、ここまで我慢しなくてもいいのかもしれない”そう思い始めたんです。このまま家庭生活が続いたら、私の頭がおかしくなってしまうというのもありました。それに気づくまで、20年かかりましたね」

結婚20年目は、百合子さんにとって区切りでもあった。ちょうど20年、この人にお仕えしたから、1回だけ休憩をください――。そんな思いから、離婚を夫に懇願した。しかし、いざ勇気を持って夫に離婚届を見せると、激高して、ビリビリに破られるという日々が続いた。

しかし、百合子さんの離婚の決意は固かった。そのため、離婚は調停にもつれ込むこととなった。

思ってもみなかった調停委員とのバトル

夫婦だけの話し合いで離婚が成立しない場合、家庭裁判所の調停で、調停委員と裁判官という、第三者を挟んで双方の意見を調整し、話し合うことになる。

この調停委員を交えての話し合いが幾度となく繰り返された。

「調停委員は、なるべく離婚をさせまいと、強引に、元のさやに戻そう戻そうとするんです。DVやモラハラがあったというと、『私たちが旦那さんに一筆書かせて、ないようにするから、あなたもちゃんと家に戻りなさい』と言われる。ただでさえ、参っているのに、このやりとりでかなり精神的に追い込まれましたね」

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