イタリアとスペインの政権交代で高まる不安

反EUや財政拡張が広がる、欧州危機は去らず

表向きはユーロ離脱の主張を封印している両党だが、関係者の一部から不気味な言動が散見されるのも事実だ。両党所属の欧州議会議員の多くは先週、ユーロ離脱が必要となった国が直面する経済的な打撃を緩和する財政支援の枠組みを整備すべき、との法案に賛成票を投じた。

同盟の経済アドバイザーは最近、政府の未払い債務の返済に借用証書を発行する計画を明かした。借用証書は法定通貨ではなく、政府債務に計上する必要はないと説明。こうした計画が現実となれば、事実上の並行通貨制につながり、ユーロ離脱への第一歩と受け止められかねない。銀行からユーロ建て預金を引き出す動きが広がるおそれがあり、脆弱な銀行システムとあいまって不安が増幅し、経済は大混乱に陥るリスクがある。

大統領が経済・財務相への任命を拒否したサボーナ氏は、同盟の強い働きかけにより、EU担当相として入閣を果たした。同氏は2015年に執筆した論考で、イタリアがユーロを離脱する「プランB」を主張した人物であり、政権内でどの程度の影響力を持つのかも気がかりだ。

拡張的な財政をめぐり秋にはEUと対立再燃

新政権が公約に掲げている貧困世帯への所得保障、減税、付加価値税率の引き上げ撤回、年金支給開始年齢の引き下げなどの政策を実現しようとすれば、財政赤字が大幅に拡大し、EUの財政規律に抵触する。来年度の予算審議が本格化する秋に向けて、財政運営をめぐるEUとの対立が表面化することは避けられない。新政権の要求が通らない場合、EUに対する批判がエスカレートすることや、交渉材料にしようとユーロ離脱の可能性や借用証書の発行計画を持ち出すおそれがある。

金融市場の混乱が広がれば、そのツケは政権に跳ね返ってくる。新政権はEUとの全面衝突を避け、いずれかの段階で現実路線に転換していくことが予想される。ただ、2015年に誕生したギリシャの急進左派連合政権がそうであったように、イタリアの新政権が政治経験の未熟さを露呈し、市場の緊迫が極限に近づくまで政策要求を貫き通す不安もある。両党の連立基盤は脆弱なうえ、政治経験のないジュゼッペ・コンテ首相の調整能力も未知数で、妥協の過程で政権が崩壊するリスクもある。そうなれば、市場が不安視する再選挙の足音が近づいてくる。

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