イタリアは「ユーロ離脱」を問うべきでない 国債金利急騰という市場の審判に耐えられず
5月28~29日(欧州時間)に加速した政局不安に端を発するイタリア売りは30日にいったん落ち着いた。セルジョ・マッタレッラ大統領が反対したユーロ懐疑派の財務相候補の人事を見直すことで、「五つ星運動」と「同盟」による連立政権樹立の可能性が再浮上したことが背景だ。
五つ星運動と同盟の連立は、欧州連合(EU)懐疑主義政権として、さまざまな連立の組み合わせの中で、イタリアの信用力にとって「最悪」とされてきたはずだ。ところが、その両党による政権樹立の動きを、市場はマッタレッラ大統領により首相に指名されたカルロ・コッタレリ元国際通貨基金(IMF)財政局長による実務家内閣よりも好感した形だ。
薄氷踏む、「同盟」と「五つ星」の連携
なぜ、市場は五つ星運動・同盟の連立政権の方がマシと判断したのか。
おそらく、実務家内閣が発足した場合は、以下の3段階の展開が起きることが強く意識されたからだろう。
第1段階は、上下両院で五つ星運動と同盟が過半数を占める状況では、実務家内閣が信認を得ることは困難なため、早ければ7月にも再選挙になるという展開だ。第2段階は、再選挙でも、五つ星運動・同盟が合計で過半数の議席を獲得、さらに議席を上積みするという展開だ。第3段階は、再選挙は、事実上「ユーロ離脱」の是非を問う国民投票の様相を呈し、五つ星運動と同盟の勝利が、ユーロ離脱への布石となるという展開だ。
本稿執筆時点では、このまま五つ星運動と同盟の連立政権樹立に至るのか、実務家内閣の暫定政権を経て再選挙に至るのかなど、なお流動的な情勢だ。
直近の世論調査は、五つ星運動が第1位の座を守りつつも、やや支持を低下させる一方、同盟の支持率はうなぎのぼりで五つ星運動との差がつまりつつある。マッタレッラ大統領の弾劾を安易に口にするなど、時に政治家としての未熟さを露呈する五つ星運動のルイジ・ディマイオ党首に対し、同盟のマッテオ・サルヴィーニ書記長は信頼できる政治家としてのイメージの定着に成功しつつある。同盟は、再選挙ではいっそうの票の上積みを期待でき、中道右派連合の中核政党としての政権掌握というシナリオも思い描ける。このまま五つ星運動と歩調を合わせ続けるとは限らない。
市場は、しばらくイタリアの政治情勢に一喜一憂させられそうだ。
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