大量の脱北者を防ぐには「体制保証」しかない 「経済特区を用いた高度経済成長」が現実解だ
――金正恩政権は「核と経済」の同時開発を進める並進路線から経済一本に転換した。経済一本で政権の正当性を維持していくには、どの程度の経済成長率が必要か。
「北朝鮮が非核化を受け入れれば、核抑止力を失うだけではない。国内をまとめ上げるための最大の求心力をも失うことになる」
「地下経済の広がりや配給制度の崩壊によって、政府による統制の仕組みは徐々に崩れはじめている。金委員長が権力の正当性を回復するためには、長期にわたるダイナミックな経済成長が何としても必要だ」
「慎重に検討を重ねたうえでの私の結論はこうだ。金正恩体制の崩壊を防ぐには、市場経済に向けた改革と開放が必要であり、非核化によって北朝鮮国内が不安定化する影響を中和するには、年率で最低10%の経済成長を10年間続ける必要がある。しっかりとした改革の青写真が描ければ、このような成長率を達成するのは難しいことではない」
「北朝鮮は高度に熟練した労働者を豊富に抱えているうえ、鉱物資源や農地、石炭も豊かで、漁業資源にも恵まれている。市場の改革開放に成功し、電力やインフラ開発、先端技術の導入、教育のための経済支援といった条件が整えば、成長の可能性は巨大だ」
高度経済成長のために必要な条件とは?
――金委員長が経済の開放に応じ、高度成長を実現するには、どのような条件が必要になるか。
「北朝鮮が非核化と引き換えに大規模な経済支援を受け入れるには、6カ国協議の合意内容が達成されなければならない。北朝鮮にとっては、米国および日本との国交正常化や朝鮮戦争を終結させる平和協定の締結に加え、体制転換を行わないことが確約されなければならないということだ。中国、ロシアとの既存の同盟関係が再確認される必要もある」
「北朝鮮経済を高度成長させるには、年間300億ドル(約3兆3000億円)の経済支援が最低でも10年にわたって必要になる。この大部分は、北朝鮮の経済発展から最大の恩恵を受ける韓国が負担することになるだろう。足りない部分は、米国による信用補完やIMF(国際通貨基金)融資によって補う必要がある」
「日本も戦後賠償として200億〜300億ドル(約2兆2000億〜3兆3000億円)を支払うべきだろう。経済援助は波及効果の高いプロジェクトを優先し、北朝鮮を世界経済に組み込んでいくものとしなければならない」